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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】北原尚彦「ホームズ連盟の冒険」(祥伝社)-「シャーロック・ホームズ」シリーズの脇役たちにスポットをあてたパスティーシュ短編集の第2弾

コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズは、主役のシャーロック・ホームズの魅力的なキャラクター像が秀逸なのだが、同時に脇役たちにも魅力的なキャラクターが溢れている。

ホームズ連盟の冒険

ホームズ連盟の冒険

 

 

北原尚彦「ホームズ連盟の冒険」は、ホームズシリーズの脇役たちを主役においたホームズ・パスティーシュ小説集の第2弾になる。

前作「ホームズ連盟の事件簿」では、ワトソン博士、ハドソン夫人、レストレード警部、アイリーン・アドラーなど、ホームズの仲間の側に属する人物で短編を展開したが、本書では、モリアーティ教授やモラン大佐という悪役キャラを主役にした短編も含まれている。モリアーティ教授が悪の黒幕として暗躍するようになるきっかけを描いた短編「犯罪王の誕生」や、モリアーティ教授の忠実なる部下で射撃の名手であるモラン大佐を描いた「R夫人暗殺計画」などは、悪の側からの物語としてパスティーシュのレベルを超えているように思う。

その他の収録作品は、以下の4編である。

ワトソン博士の妻であるメアリ・ワトソン夫人が憔悴していく双子の謎を解く「蒼ざめた双子の少女」
ベーカー街221Bのホームズの下宿で働く少年給仕ビリーが活躍する「アメリカからの依頼人」
ホームズの兄マイクロフト・ホームズが自らが所属するディオゲネス・クラブ最大の危機を、文字通り重い腰を上げて解決する「ディオゲネス・クラブ最大の危機」
ワトソン博士とホームズを引き合わせた医学助手スタンフォードが、実はそれ以前にホームズから221Bの下宿での同居を頼まれていて、もしかしたら彼がワトソン博士の役回りになっていたかもというifをテーマにした「ワトソンになりそこねた男」

著者の北原氏が、筋金入りのシャーロキアンであるため、全部の作品が、シャーロック・ホームズの世界観を完璧に保ったままにレベルの高いパスティーシュ短編としてできあがっている。モリアーティ教授やマイクロフト・ホームズなど、本編シリーズでも屈指の人気キャラは当然なのだが、よほどのホームズ読者でも忘れてしまいそうなスタンフォードのようなキャラクターにも物語を与えてしまうところは流石だと思う。

本書のように、様々な形でパロディやパスティーシュ小説が執筆され出版されているのが、シャーロック・ホームズシリーズが愛されている証左だと思う。私が知らないだけかもしれないけれど、アルセーヌ・ルパンやエルキュール・ポアロ、日本でいえば明智小五郎金田一耕助などの名探偵やその仲間たちを描いたパロディやパスティーシュは、あまり見かけないように思う。(ルパン三世が、ある意味でパロディの域を超えた存在であるようには思うが)

こうして、パロディやパスティーシュが数えきれないほどに登場するのも、ホームズやその他の脇役たちがそれぞれに魅力的で、いわゆる「キャラが立っている」からこそなのだろう。そう考えると、100年以上前にこれだけのキャラクターを想像して、それぞれに魅力を注入したコナン・ドイルの作家としての力量に改めて感動するのである。

 

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ホームズ連盟の事件簿

ホームズ連盟の事件簿