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【書評】紗倉まな「高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職」(宝島社)−自分の仕事を《天職》と胸を張って言える幸せ

最近、テレビとか雑誌とかネットとかで、女性のグラビアを見るときに思うことがある。

この女性は、アイドルなのか?女優なのか?グラビアモデルなのか?それともAV女優なのか?

こういうグラビアでにこやかな笑顔を振りまいてみせる女性は、例外なく美しくてカワイイ。私が高校生から20代くらいの頃は、テレビや雑誌に登場する笑顔の美女は、アイドル歌手か若手女優、もしくはモデルだった。当時まだ普及し始めくらいだったアダルトビデオに出演しているような女性は、あまり一般雑誌や地上波テレビには登場していなかったはずだ。

高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職

高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職

 

 

それが今では、「え、この娘、AV女優なの?」と驚くような美少女が、もう当たり前のようにメディアに登場している。容姿やスタイルは、アイドルやモデルと遜色がなく、むしろ彼女たちを凌駕する場合もある。彼女たちを見分ける点は、「裸になるか、ならないか」くらいしかない。

それに、最近のAV女優は、自分の仕事を隠そうとしない。もちろん、すべてのAV女優がオープンにしている訳ではないのだが、メディアに頻繁に登場するようなAV女優は、自分の仕事に誇りをもっているように見える。

本書「高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職」の著者・紗倉まなの職業は《AV女優》である。

本書には、彼女が父親の書斎で見つけたアダルトビデオに映しだされた女性の裸体の美しさに衝撃を受け、自らもAV女優になりたいと憧れを抱いたこと。高等専門学校に通いながら18歳で自らモデル事務所に応募してAVデビューを果たしたこと。そうした経緯が記される。

彼女は、デビュー以降、様々なビデオ作品に出演し、AV女優としての人気を獲得していく。そして、ビデオ作品のみならず、雑誌や写真集、各種イベントやテレビ出演など、次第のその活躍の幅を広げていく。

彼女は、《AV女優》という職業に誇りをもっている。彼女は、《AV女優》という職業を自らの天職であると言いきる。実に潔い。

かつて、AV女優というのはタレント業としても、世間一般的な評価しても、レベルの低い仕事だと思われていた。われわれ男性陣も、彼女たちのお世話になっておきながら、ちょっと下に見てバカにするような気持ちでいたことは、正直に告白しなければならない。

しかし、紗倉まなを筆頭に、積極的にメディアに出演し、AV女優という存在を積極的にオープンにして自分を知ってもらおうという女性が増えてきたことで、AV女優に対する世間の目は変わってきた。今では、メディアに出演する彼女たちを見て、彼女たちが出演しているアダルトビデオを見て、AV女優という職業に憧れ、AV女優になりたいと思う女性が現れてきている。そこには、かつて私たちが抱いたようなAV女優のイメージはもうない。

「《AV女優》という職業は、女性が憧れる職業のひとつとして市民権を得た」と言うのは言い過ぎだろうか。

確かに、まだダークなイメージもある。イメージビデオの撮影といわれて現場に言ったらアダルトビデオの撮影だった、なんていう騙し討ちのようなこともあるという話が、真偽の程は不明だが、常にネット上には溢れている。

それでも、映画女優やアイドル、歌手、モデルに憧れるように、AV女優に憧れる少女が普通に存在する時代がもう来ている。いずれ、世の中の美少女はAV女優を目指す、みたいな時代になったとしても驚かないかもしれない。