ガタガタ書評ブログ

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【書評】ヘニング・マンケル「霜の降りる前に」(東京創元社)ーヴァランダーシリーズ初読み。このシリーズは最初から読むことをオススメします

スウェーデンの作家ヘニング・マンケルによる警察小説「刑事ヴァランダーシリーズ」の日本翻訳最新刊である。実は本書が、ヴァランダーシリーズ初読み。

霜の降りる前に〈上〉 (創元推理文庫)

霜の降りる前に〈上〉 (創元推理文庫)

 
霜の降りる前に〈下〉 (創元推理文庫)

霜の降りる前に〈下〉 (創元推理文庫)

 
霜の降りる前に 上 :刑事ヴァランダー・シリーズ (創元推理文庫)

霜の降りる前に 上 :刑事ヴァランダー・シリーズ (創元推理文庫)

 
霜の降りる前に 下 :刑事ヴァランダー・シリーズ (創元推理文庫)

霜の降りる前に 下 :刑事ヴァランダー・シリーズ (創元推理文庫)

 

 

 

スウェーデン南部の町イースタの警察署に勤める刑事クルト・ヴァランダーを主人公とするシリーズであるが、今回の主役は彼の娘のリンダである。警察学校を出て、秋から父親と同じイースタ署に勤務することが決まっているリンダは、勤務が始まるまでの間、父親のアパートメントで暮らしている。

ある日、友人であるアンナが行方不明となる。その直前に彼女は、子供の頃に姿を消してしまった父親を見かけたと言っていた。リンダは、友人を心配し、独自に捜査を始める。アンナのアパートに入り込み、彼女が失踪した手がかりを探し求める。

その頃、イースタの町では不可解な事件が頻発していた。

動物たちが燃やされる事件があり、白鳥、子牛、そしてペットショップが放火される。また、中年女性が失踪する事件も発生。その女性の名前が、アンナの日記の中に記されていたことがわかる。果たしてリンダは事件に関わっているのか?

一見すると関連性はないと思われていた事件が、次第にひとつに収束していき、相互に関連した真相が明らかになっていく。これは、言ってみれば警察小説のような群像劇の定番パターンだと思う。例えば、エド・マクベインの「87分署シリーズ」などでも、同様のパターンはあったように思うし、警察小説に限定しなくても、ミステリー小説というのは大枠として、このパターンを踏襲しているように思う。そういう意味で、ヘニング・マンケルの「刑事ヴァランダーシリーズ」も同系列のミステリー小説である。

今回、本シリーズ作品を初めて読んだのだが、実は勝手にイメージしていたクルト・ヴァランダーのキャラクター像と小説で描かれているキャラクター像にギャップがあって驚いた。というのも、私のイメージは、本シリーズのテレビドラマ(英BBC制作)でクルト・ヴァランダー役をケネス・ブラナーが演じていたというのを知っていたからだ。

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ところが小説の中では、クルトは娘にメタボを心配されるような、なかなかのリアル中年なのである。なるほど、ドラマに出てくる役者とはイメージが違うものだ。もしかすると、ドラマの中でもケネス・ブラナーは原作のイメージに忠実な役作りをしているのだろうか?(実はドラマも未見)

あと、本書に関して言えば、シリーズの先行作品を読んで、登場人物の関係とはバックデータを知っておいた方が楽しめると思う。シリーズ物の場合、どこを選んで読んでも問題のないタイプの作品もあるが、本シリーズに関しては、最初から読んでいくのが適しているように思う。もっとも、別作品を読んでいないので、本書ゆえの印象かもしれないのだが。

いずれにせよ、全世界で2000万部以上も売れているというシリーズだけあって、レベルの高い作品であることは間違いないと思う。本書をきっかけにして、シリーズの別作品にも手を伸ばしてみたいと思った。