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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

青山文平「つまをめとらば」(文藝春秋)-世の中は人と人が関わりあうことで回っている。

書評 直木賞

世の中は、人と人との関係で成り立っている。

夫婦関係、友人関係、親戚関係、等々。人間というのはいつも誰かと関係を有し、その関係の中で生きている。

つまをめとらば

つまをめとらば

 

 

つまをめとらば (文春e-book)

つまをめとらば (文春e-book)

 

第154回直木賞を受賞した青山文平「つまをめとらば」に収録されている6つの短編には、それぞれに様々な人間関係が描かれている。

ひともうらやむは、克巳と庄平という縁戚関係にある者同士の親友関係を主体的に描きながら、男にとって一番身近にあって、でもあまり見えていない妻という存在のミステリアスな面を描き出している。平凡なように見えて実は強かな女の一面は、ちょっと怖いと感じる。

表題作でもあるつまをめとらばに登場する省吾と貞次郎は、子供の頃からの幼なじみだ。すでに共に60を目前にした老境の身であるが、省吾がバツ3であるのに対して、貞次郎は独身を貫いてきた。貞次郎は、省吾の家の庭に建つ家作を借りて暮らすようになるが、借りるときに話していた結婚相手を一向に家作に迎えようとしない。こうして、男同士のややギクシャクとした生活が続いていく。

本短編集で描かれる男衆は、いずれもどこか頼りなく、優しい。その一方で、女たちは誰もが強くたくましい。男衆でいえば、ひともうらやぬの克巳と庄平は女房に振り回されているし、つゆかせぎの私には自分の知らない亡妻の姿があり地方廻りの行きずりに抱いた女・銀の母としての強さに驚かされる。乳付の信明は一見頼りなさ気に見えるが実は妻・民恵を気づかう優しい夫だし、ひと夏の高林啓吾には頼りなさそうな中に剣術の達人としての強さが垣間見える。逢対つまをめとらばでは、男同士の友情が描かれる。それは、ある意味で腐れ縁ともいえる関係だ。そして、男というのは、痩せ我慢でええカッコしいなんだということを描き出す。

時代小説は、それほど得意なジャンルではないし、積極的に手に取って読むこともない。今回は、直木賞の候補作になったということで図書館で借りたもので、読んでいる最中に直木賞の受賞が決まった。

不得手なジャンルではあるけれど、こうして読んでみると確かに面白い。なるほど、受賞も肯ける。時代小説ではあるけれども、作品世界には草食系男子や肉食系女子のような現代的な要素も反映されていると感じた(タイムリーか否かの評価は分かれるかと思うが)。