2015年の読み納めで、セサル・アイラ「わたしの物語」を読んだ際に、「2016年の読み初めには、アイラの『文学会議』を読もう」と宣言したとおり、2016年のレビュー第1号は、セサル・アイラ「文学会議」です。
本書には、表題作の「文学会議」と、「試練」の2篇が収められています。
「文学会議」は、作家でありマッド・サイエンティスト(この設定がすでに読者を翻弄しています)であるセサル・アイラがクローン作成に成功し、世界征服のために文学会議が開催されているメリダの街に来て巻き起こす騒動を描いています。
セサルが、なぜメリダにやってきたのか。それは、文学会議に出席しているカルロス・フエンテスの細胞を入手して、そのクローンを作成しようと考えたからです。
クローンの元となるフエンテスの細胞を手に入れたセサルは、クローンの作成を始めますが、とある手違いから目的外の生物を生み出し、メリダの街をパニックに陥れることになります。このあたりの展開、はっきりいってメチャクチャです。メチャクチャですけど面白いです。
もう1篇の「試練」は、街でナンパされて知り合った女の子3人が、最終的にスーパーマーケットを襲撃するに至る物語です。こう書くと、わりと素直なストーリー展開になっているように思えますが、実際に読んでみると、ところどころで完全に読者を振りきって置いてけぼりにするようなエピソードが挿入され、読者を翻弄してくれます。私なんて、一応2回読んだんですけど、今だに困惑した状態だったりします。(読解力の問題かもしれませんが)
「文学会議」も「試練」も、軸となるストーリーは最初から最後までブレていないのかもしれません。軸がしっかりしているからこそ、一見ハチャメチャな展開でも読み進められるのだと思います。ただ、セサル・アイラが読んでいて非常に疲れる作家だというのは間違いないでしょう。とにかく一筋縄ではいかない。読み手に油断することを許さない。1度や2度読んだだけで、セサル・アイラの作品の本質を読み解こうなんてムリ。アイラの作品は、2回以上読んでみないと理解できません。これから読まれる方は、ぜひ繰り返し読んでみることをオススメします。
- 作者: カルロスフエンテス,Carlos Fuentes,寺尾隆吉
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