タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

高校の吹奏楽部に所属するハルタとチカ。彼らが遭遇する日常の不思議-初野晴「惑星カロン」(角川書店)

初野晴「惑星カロン」は、高校の吹奏楽部に所属する上条春太と穂村千夏の幼なじみコンビが、吹奏楽コンクールの最高峰《全日本吹奏楽コンクール(会場の名前から「普門館」と呼ばれる)》の出場を目指す中、学校内な彼らの周囲で起きる日常の謎を解き明かす人気ミステリーシリーズ「ハルチカシリーズ」の第5作である。

惑星カロン

惑星カロン

 

本書には、4編の短編が収められている。

そのフルートを所有するものには、些細な不幸が訪れる。そんな曰くつきのフルートでも、チカはのどから手が出るほど欲しいと思った。倉沢楽器店の主人のご厚意でしばらくレンタルさせてもらえることになったのだが、それはまさに“呪いのフルート”であった。...「チェリーニの祝宴-呪いの正体-」

通りがかった公園で偶然に藤ヶ咲高校吹奏楽部部長の岩崎に出会ったチカは、彼から南高吹奏楽部の山辺コーチを紹介してほしいと頼まれる。山辺コーチに、ある音楽暗号を解いて欲しいというのだ。その暗号には、ある恐ろしい謎がこめられていた。...「ヴァルプルギスの夜-音楽暗号-」

その朝、ハルタとチカが登校すると学校が騒然としていた。旧校舎の窓という窓がすべて開け放たれた状態になっていたというのだ。もしかして、学校に空き巣が入ったのだろうか。しかし、その理由はなんとも意外なものであった。...「理由ありの旧校舎-学園密室?-」

チカの洋服を選ぶためにセレクトショップにやってきたハルタとチカは、不審な動きをする少女に出会う。彼女-倉沢あゆみは、フルートのアンサンブルコンテストで《惑星カロン》を演奏するために、かつてその曲をコンテストで演奏して金賞を受賞した新藤誠一からネット経由で音源と楽譜を入手していた。その際に、セレクトショップで起きた不思議な人間消失事件の話を聞いたのだった。...「惑星カロン-人間消失-」

シリーズ物の場合、ことに主人公の成長がひとつの軸となっているようなシリーズ作品は、できるだけ最初から読んだ方がよい。私も、この「ハルチカシリーズ」は、第1作目の「退出ゲーム」から、第2作「初恋ソムリエ」、第3作「空想オルガン」、第4作「千年ジュリエット」と順番に読んできた。

ハルタとチカが所属する南高吹奏楽部は、部員数も少なく廃部寸前の状態だったが、ハルタとチカ、そして顧問を引き受けてくれた草壁先生によって部員数を増やしてきた。その中で、彼らの周囲で起きる様々な日常の謎を、頭脳聡明なハルタが解き明かすというのが、本シリーズのパターンだ。

本シリーズには、日常の謎を解き明かすという個々の短編の要素だけでなく、シリーズ全体を貫く軸となる物語がふたつある。ひとつはハルタとチカが所属する南高吹奏楽部が普門館に出場できるようになるのか、ということ。もうひとつは、彼らを指導する草壁先生の謎めいた過去に関すること。本書でも、「惑星カロン-人間消失-」で彼の過去に関すると思われる話があった。今後、シリーズの進展とともに、それぞれのストーリーも進展するのだろう。

退出ゲーム (角川文庫)

退出ゲーム (角川文庫)

 
初恋ソムリエ (角川文庫)

初恋ソムリエ (角川文庫)

 
空想オルガン (角川文庫)

空想オルガン (角川文庫)

 
千年ジュリエット (角川文庫)

千年ジュリエット (角川文庫)