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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

タイトルのインパクトは大だけど、その中身は王道パターンの小説-住野よる「君の膵臓をたべたい」

難病ものというのは、泣かせる小説の定番であろう。ましてや、青春真っ盛りの若い男女が主人公で、そのヒロインが不治の病に冒されて余命幾ばくもない中で愛を育んでいくなんて設定は、もはや泣かせるために書かれているとしか思えない。

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

 
君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

 

住野よる「君の膵臓をたべたい」は、そのタイトルのインパクトで「ホラー小説なの?」と思わせるが、ストーリーとしては泣かせる物語だ。でも、ありきたりの泣かせる物語とはちょっと違っている。

主人公であり物語の語り部となるのは高校生の《僕》。主人公は、読書を趣味として、他人との付き合いや繋がりには興味がない。むしろ、積極的に他者との関係性を持たないようにしている。

そんな主人公が、病院で偶然に出会ったのが同じクラスの少女・山内桜良だった。

彼女が病院の待合室に置き忘れた「共病文庫」と題する日記を読んだ主人公は、彼女が膵臓の病を抱え余命わずかであることを知る。そのことで、主人公と桜良は、彼女の病の秘密を共有する関係となる。

桜良と秘密を共有することになった主人公は、桜良の奔放な態度に振り回されるようになる。街に連れだされて一緒に焼き肉を食べたり、突然一泊旅行に連れ出されたり。そのたびに主人公は、桜良の自由ぶりに呆れつつ、彼女に付き合う。で、そのことがクラスの中で波紋を広げ、彼の立場を微妙なものにしたりする。

読者は、余命わずかの少女と、その秘密を知ってしまった少年の不器用な恋愛関係を、この物語から読み取ろうとするだろう。しかし、実際に読んでいくとそういうありきたりな展開とは違う面が見えてくる。

この物語の中で、確かに桜良は死ぬ運命にあり、桜良の短い残り人生を彼女に振り回される関係の中でともに過ごした主人公も、人間として成長して物語は幕を閉じる。だが、話のポイントとなる場面は、過去の同様の小説たちとはちょっと違った変化球が投じられている。それは、桜良が亡くなる(というか、主人公が彼女の死を知る)場面。正直、「えぇ!? マジでぇ!?」と思ってしまった。ただ、その後の、主人公が彼女の遺した「共病文庫」を読み、猛烈な喪失感に号泣し、そして彼女の意志を受けて次の一歩を踏み出していく一連の場面の展開については、従来の王道パターンである。

ところで、本書は「泣ける小説」とされている。冒頭に書いたように、泣かせる小説のパターンからすれば、本書はそこに合致しているだろう。だが、実際に読んで泣けたというと、私は泣くには至らなかったということは、最後に告白しておきたいと思う。