ガタガタ書評ブログ

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1944年ベルリンを舞台にユダヤ人の元刑事とナチス上級将校のコンビが挑む猟奇殺人事件の謎-ハラルト・ギルバース「ゲルマニア」

この本、読み終わってから少し寝かせてしまいましてね。特に理由はないのですが、他の本を読んでたり、8月に入って戦後70年で戦争関連の本を集中して読んでいたりしたもので。

ということで、改めてレビューしていきます。

ゲルマニア (集英社文庫)

ゲルマニア (集英社文庫)

 

ハラルト・ギルバース「ゲルマニア」の舞台は、1944年5月のベルリンです。第二次世界大戦の戦況が連合国軍優位に展開し、ベルリンをはじめドイツ各地には連日の空襲が行われている時期。ノルマンディー上陸作戦が1944年6月ですから、その直前にあたります。

物語は、ユダヤ人の元刑事リヒャルト・オッペンハイマーのもとに、ナチスの親衛隊情報部員が現れます。彼らは、オッペンハイマーをある場所へと連行します。そこには、フォーグラー大尉と名乗る親衛隊将校が待ち受けていました。そして、無残に惨殺された若い女性の死体も。

あぁ、そうですね。ナチス政権下にあってユダヤ人のオッペンハイマーが、強制収容所に入れられることなく生活を続けられているのはなぜか、という疑問がありますね。それは、彼の妻がアーリア人だからです。

さて、オッペンハイマーの前に現れたフォーグラー大尉は、彼に目の前に無残に横たわる女性が殺害された事件を捜査するように命じます。ナチスの指示で動くことに憤りと不安を感じるオッペンハイマーですが、元刑事としての血が騒ぐのか、この命令を受けいれ、フォーグラー大尉と共に事件の捜査に動き始めることになります。

一応、本書はミステリーです。ただ、ミステリー的な要素については、あまり評価は高くありません。ですが、作品として駄作かというと決してそのようなことはありません。むしろ、ミステリー要素は物語全体を成立させるためのガジェットだと考えた方がいいです。

第二次世界大戦中、ナチス政権下のドイツを舞台にしている。
ユダヤ人の元刑事とナチス親衛隊の上級将校がコンビを組んで事件を捜査する。
ナチス内部の対立構造も盛り込まれ、対立する勢力間で主人公が翻弄される。

こうした舞台設定で書かれた物語が面白くないとしたら、それは作家の腕の問題です。「じゃあ、『ゲルマニア』はどうなんだ?」ってことですが、これがもうスゴイ。著者のハラルト・ギルバースは本書「ゲルマニア」がデビュー作で、本国ドイツではこのデビュー作によりフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)の新人賞を受賞しています。

私が「ゲルマニア」を読みたいと思ったのは、4月に参加した翻訳ミステリー大賞での出版社対抗ビブリオバトルで紹介されたからです。あのときは、プレゼンした編集担当さんが上手かったのか、ググっと作品に興味がわいてきて、発売日を首を長くして待ちましたよ。で、入手して読み始めたわけです。期待値が高い分、実際に読んだらガッカリしちゃうかも、という懸念は多少ありましたけど、実際に読んでみたら決してそういうこともなく。手放しで、「これは傑作!みんなにオススメしたい!」というほどの思い入れはありませんけど(オイ!(笑))、十分に楽しく読ませていただきました。

そもそも続編が意識されているのかは定かではありませんが、設定としては十分に続編も考えられるし、場合によってはシリーズ物に発展する可能性も考えられるのが「ゲルマニア」。日本で評判になったからといってドイツで続編が書かれる訳ではありませんが、ちょっと期待してみたいという気もしています。