ひとりが好きである。
ひとりだと肩の力が抜けて、落ち着いた気分でのんびりと過ごすことができる。ひとりの時間は、私にとっては何より代えがたい貴重な時間なのである。
もともと、他人と交わるのがあまり得意な方ではなくて、仕事でもプライベートでも誰かと接しているとものすごく気疲れする。絶えず緊張した状態にいて、終わってひとりになると本当にホッとしてしまう。
対人関係以外の仕事面に関しても平常心で取り組むのが難しい。仕事には完璧な成果を求めたがるので、一度仕事に取り組み始めると、いつまでたってもゴールに辿りつけない。自分の仕事の悪いところばかりが気になってしまって、「これでOK!」という結論を得られないのだ。
そんな、「緊張しい」で「完璧主義」な自分を少しでも楽にできる方法はないものだろうか。そう考えて本書「平常心~なにがあっても折れないこころの育て方」を読み始めた。
本書は、精神科医である著者が気楽に平常な日々を送るために必要な心得を記した、一種の自己啓発本である。
本書の帯には、「本書は、こんな症状の方によく効きます」として、
・上司の何気ない一言が心に刺さって立ち直れない
・他人の言動に腹が立ってイライラが止まらない
・人が妬ましくて心が落ち着かない
・不安と緊張で実力が発揮できない
・気持ちを伝えようとしても緊張してドキドキが止まらない
といったことが記してある。
ウン、いちいち身に覚えがあるなぁ~
こういった症状を緩和してくれて、平常心を保てるようになる方法とは、どのようなものだろう。
・「頑張る」ことをやめてみる
・「忘れる力」を身につける
・「負け」を受け入れる
・「完璧な成功」は存在しないと認識する
・「いいかげん」を大切にする
要するに、
「考えすぎずに適当に生きていていけばいいんだよ」
ということなのだろう。
本書に書かれていることは、おそらく著者が精神科医として日々向き合っている患者さんに対するカウンセリングの内容を記したものなのだと思う。メンタルの疾患で精神科や心療内科に通院する患者さんの多くは、常に緊張した状態で生活し、仕事にしてもプライベートにしてもどこかで完璧を求めたがる。そういった堅苦しいメンタリティを解き放して安寧を得ることが、おそらく最善の治療法になるのだろう。
ただ、本書を読んだからといって、そのような精神の安寧を得られるほどに気持ちの切り替えができるのかというと、それはなかなかに難しい。
「そうは言うけど、実行するのは難しいし、できないよなぁ~」
と考えてしまう。
と、そこまで考えて気がついた。「できる」/「できない」という二択で物事を考えてしまうところに問題があるのではないか? 「これはできる」、「これはできない」とON/OFFで判断してしまうから、気持ちが楽にならないんじゃないのか?
例えば、はじめは「できる」と思っていたことが、取り組んでいく中で「できない」となってきたら、「あぁ、やっぱ無理だわ、やめちゃおう」とあっさり諦めてしまえれば、きっと気持ちが楽になるんじゃないだろうか。
でも、そのためにはかなり強い心を持っていないと厳しい。だって、仕事を途中で平気で投げ出せる勇気が必要なんだよ。それって、相当な勇気だと思うわけで、あっさり投げ出しちゃったあとの罪悪感にも打ち勝てなければならない。
そう考えてしまうと、本書に書かれていることも、実際に実行するには、実行の結果として我が身に返ってくるリスクも受け流せるくらいの強さが必要なのだということになる。そんなメンタリティを持ち合わせているならば、緊張感や不安感にそもそも押し潰されることもなく、本書のような啓発本に頼らずとも平常心を保てるはずだ。
結局のところ、本書の内容いかんにかかわらず、何事も気の持ちようってことなんだよね。