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第5回Twitter文学賞結果発表を受けて-エンタメ小説好きはもっと頑張れ!

去る3月1日(日)に、第5回Twitter文学賞の結果発表が行われ、海外編、国内編のベストテンが発表された。詳細なランキングは別途Twitter文学賞事務局から発表されているので、今回は各ベストテンを簡単に。

■海外編(http://matome.naver.jp/odai/2142516209073327001

第1位 「愉楽」閻連科/谷川毅 河出書房新社
第2位 「ピース」ジーン・ウルフ西崎憲・飯野浩美 国書刊行会
第3位 「別荘」ホセ・ドノソ/寺尾隆吉 現代企画室
第4位 「ストーナージョン・ウィリアムズ東江一紀 作品社
第5位 「火星の人」アンディ・ウィアー/小野田和子 早川書房
第6位 「低地」ジュンパ・ラヒリ小川高義 新潮社
第7位 「遁走状態」ブライアン・エヴンソン/柴田元幸 新潮社
第8位 「コールド・スナップ」トム・ジョーンズ舞城王太郎 河出書房新社
第9位 「大いなる不満」セス・フリード/藤井光 新潮社
第10位 「逃亡派」オルガ・トカルチュク/小椋彩 白水社

■国内編(http://matome.naver.jp/odai/2142526541168737201

第1位 「金を払うから素手で殴らせてくれないか?」木下古栗 講談社
第2位 「海色の壜」田丸雅智 出版芸術社
第3位 「ボラード病」吉村萬壱 文藝春秋
第4位 「東京自叙伝」奥泉光 集英社
第5位 「離陸」絲山秋子 文藝春秋
第6位 「エヴリシング・フロウズ」津村記久子 文藝春秋
第7位 「鳩の撃退法」佐藤正午 小学館
第8位 「海うそ」梨木香歩 岩波書店
第8位 「献灯使」多和田葉子 講談社
第9位 「てらさふ」朝倉かすみ 文藝春秋
第10位 「知的生き方教室」中原昌也 文藝春秋

見事にTwitter文学賞らしさが出た結果になっている。
海外編にしても国内編にしても、いわゆる年末の各種ベストテンであったり、各種文学賞(芥川、直木、山周、三島、等々)にはあがってきそうもないタイプの作品が並んでいる。

私は、第1回からTwitter文学賞を見てきて、第2回からは実際に投票もしてきているのだが、毎回結果が出るたびに思うのは、「エンタメ系の作品は票が集まらない」ということだ。

なぜ、Twitter文学賞ではエンタメ系の作品に票が集まらないのだろう?

単純に考えれば、エンタメ系の小説が好きなTwitter民が積極的な投票をしていないということなんだろう。

では、なぜエンタメ系読者は積極的に投票しないのか?

私の勝手な見解なのだが、Twitter文学賞は敷居が高いように思う。
「敷居」というのは、自分が推したい作品をハッシュタグを付けてツイートする、という行動をもって「敷居が高い」と云う訳ではなく、Twitter文学賞が醸し出している雰囲気が敷居を高く感じさせているのである。

今回のランキングを見てもわかるように、国内編も海外編も、高尚であったり、重厚であったりといった文学作品が大多数を占めている。どの作品も、じっくりと物語世界に入り込んで、ゆっくりと味わいたいタイプの小説で、空いた時間に気楽に手にとって、サラ〜っと読めるような作品は少ない。いや、読めるよって人もいるかもしれないけど、私はムリです。

第1回から第4回までの結果を見ても、エンタメに該当する作品が一定の票を集めてランクインするケースは、やはり少ない。まったくないわけではないけれど、回を重ねていくごとにエンタメ系の作品が徐々に弱くなっているように思える。国内編ベストテンの第1回から第4回を振り返って確認してみよう。

第1回国内ベストテン
1.「二人静盛田隆二
2.「ピストルズ阿部和重
3.「俺俺」星野智幸
3.「民宿雪国樋口毅宏
4.「華竜の宮」上田早夕里
4.「ペンギン・ハイウェイ森見登美彦
5.「寝ても覚めても」柴崎友香
6.「日本のセックス」樋口毅宏
7.「ふがいない僕は空を見た窪美澄
8.「小暮写眞館」宮部みゆき
8.「シューマンの指」奥泉光
8.「マリアビートル」伊坂幸太郎
9.「醜聞の作法」佐藤亜紀
9.「どろんころんど」北野勇作
10.「折れた竜骨」米澤穂信
10.「星座から見た地球」福永信

第2回国内編
1.「11 eleven」津原泰水
2.「こちらあみ子」今村夏子
3.「これはペンです」円城塔
4.「雪の練習生」多和田葉子
5.「舟を編む三浦しをん
6.「ワーカーズ・ダイジェスト」津村記久子
7.「人質の朗読会小川洋子
8.「ジェノサイド」高野和明
8.「マザーズ」金原ひとみ
9.「なずな」堀江敏幸
9.「開かせていただき光栄です」皆川博子
10.「きつねのつき」北野勇作

第3回国内編
1.「本にだって雄と雌があります」小田雅久仁
2.「屍者の帝国伊藤計劃円城塔
3.「わたしがいなかった街で」柴崎友香
4.「ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ」金井美恵子
5.「ここは退屈迎えに来て」山内マリコ
6.「金の仔牛」佐藤亜紀
7.「64」横山秀夫
7.「双頭のバビロン」皆川博子
8.「ウエストウイング」津村記久子
8.「母の遺産」水村美苗
8.「嵐のピクニック」本谷有希子
9.「飛行士と東京の雨の森」西崎憲
9.「ソロモンの偽証」宮部みゆき
10.「クエーサーと13番目の柱」阿部和重
10.「奇貨」松浦理英子
10.「雲をつかむ話」多和田葉子
10.「火山のふもとで」松家仁之
10.「濡れた太陽高校演劇の話」前田司郎

第4回国内編
1.「スタッキング可能」松田青子
2.「皆勤の徒」酉島伝法
3.「問いのない答え」長嶋有
4.「工場」小山田浩子
5.「1+1=Namida」zopp
6.「想像ラジオ」いとうせいこう
7.「know」野崎まど
7.「未明の闘争」保坂和志
8.「おはなしして子ちゃん」藤野可織
8.「南無ロックンロール二十一部経」古川日出男
8.「忘れられたワルツ」絲山秋子
9.「いつの日も泉は湧いている」盛田隆二
10.「かがやく月の宮」宇月原晴明
10.「図書館の魔女」高田大介
10.「優しい死神の飼い方」知念実希人

どのような作品をもって「エンタメ系」とするかは、読み手の考え方次第なのだが、ここはあくまで私の個人的な考えでいくと、

第1回におけるエンタメ系は、
  ・「小暮写眞館」宮部みゆき
  ・「マリアビートル」伊坂幸太郎
の2冊。

第2回におけるエンタメ系は、
  ・「舟を編む三浦しをん
  ・「ジェノサイド」高野和明
の2冊。

第3回におけるエンタメ系は、
  ・「64」横山秀夫
  ・「ソロモンの偽証」宮部みゆき
の2冊。

第4回におけるエンタメ系は、該当作なし。

そして、第5回におけるエンタメ系は、やはり該当作なし。

だろうと思う。SF系をエンタメと分類することもできなくはないけど、「皆勤の徒」を気軽にサラ〜っと読めるかというと多分ムリ。

こうしてみると第3回までは世間一般でも認知度が高くベストセラーに該当するような作品が票を集めることがあったが、第4回以降はベストテン内に知名度の高い作品はランクインしなくなっている。(11位以下にはある)

実は、これこそがTwitter文学賞が他の文学賞やランキングと異なる一番のポイントであり、Twitter文学賞に対する敷居の高さを表しているのだと思う。

そもそもTwitter文学賞が主催である豊崎由美さんの肝いりでスタートしたときから、「他の凡百な文学賞やランキングとは違う本当に自分の好きな作品に投票する」というポリシーがあって、かつ「国内作品1作、海外作品1作を厳選して投票する」というルールがあるから、いわゆる2位、3位クラスの無難に票を集めるタイプの作品は淘汰される仕組みになっている。

また、Twitter文学賞に投票する人たちは、読書家の中でもレベルも意識も高い人たちが多いように思う。だから、気軽に投票したいエンタメ系の読者が、ついつい敷居を高く感じてしまって、投票に二の足を踏んでしまうのではないだろうか。

しかし、である。Twitter文学賞は決してエンタメに対して門戸を閉ざしている訳ではない。Twitterのアカウントさえ持っていれば、誰でも自分の好きな本に投票することができる。現に、私は今回、国内編は、阿部和重伊坂幸太郎合作の「キャプテン・サンダーボルト」に投票した。この作品は、紛れもなくエンターテインメント小説である。

自分が好きな小説であれば、何に投票したって構わないのがTwitter文学賞の魅力である。来年の第6回Twitter文学賞では、もっとエンタメ好きの読書家さんたちが、積極的に投票してエンタメ小説をもっと盛り上げていきましょうね!


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