読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

出るぞ必殺倍返し!大臣相手だって容赦しないぜ!-池井戸潤「銀翼のイカロス」

頭の中はすっかり堺雅人なのである。

銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

 
銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

 

池井戸潤銀翼のイカロス」は、「倍返しだ!」でお馴染みの半沢直樹シリーズ第4作になる。今回、半沢に課せられる無理難題は、経営危機にある帝国航空の再建問題だ。半官半民で親方日の丸の体質が抜けきらずまともな再建計画が一向に進行しない帝国航空に対して、半沢は大胆なリストラ策などを含む大規模な計画見直しを要求、どうにか再建計画案を取りまとめ、有識者会議の了承を取り付ける。しかし、実行に移そうと矢先に総選挙で政権交代が実現され、新たに国土交通大臣となった白井亜希子は旧政権時代の再建計画を白紙撤回すると宣言、私設の諮問機関としてタスクフォースを立ち上げ、企業再生のスペシャリストである乃原に帝国航空再建の舵取りを要請する。タスクフォースが東京中央銀行を始めとする銀行各社に要求したのは、帝国航空に対する債権の7割を放棄するというものだった。

最終回の視聴率が40%を超える大ヒットドラマの影響は、かくも強いものなのか。本書を読んでいる間中、半沢直樹堺雅人のイメージがまるで払拭されないのである。キャラクターイメージが固定されていると、読みやすい面もあるし、イメージの影響が強過ぎて読みにくさを感じてしまう部分もある。その辺りは一長一短だ。

今回、堺雅人・・・じゃない、半沢直樹が戦う相手は国家権力である。本作は、帝国航空というナショナルフラッグキャリアの破綻と再建を軸に、政治的な思惑や利害する者同士の持ちつ持たれつな腹の探り合いが描かれている。それぞれが何をモデルにしているかは説明するまでもない。政治的な部分については、かなり大げさに書かれているのだろう。現実に、政権交代があったからといって、本作における白井大臣のように、「旧政権の政策は、たとえ正しくても全否定」などという前時代的な思想の政治家は、非現実的な気がする。小説的な面白さという意味では間違っていないけどね。

あと、白井大臣にしても箕部代議士にしても、いろいろな意味で脇がだいぶ甘い。リアルな政治家は、もうちょっとうまく立ち回れるんだろうと思う。

もっとも、読者が半沢直樹シリーズに求めているのは、半沢が自らに課せられた無理難題をいかにしてクリアしていくか、半沢を窮地に陥れる悪役は誰で、その相手にどのような鉄槌を下すのか、という「勧善懲悪」である。しかも、ドラマが大ヒットして「倍返しだ!」が流行語にもなった以上、ドラマ放映後第1作となる本書には、ドラマのイメージを重ねる読者も多いし、私のようにいやが上にもイメージさせられてしまう読者もいる。半沢直樹に求められるのは、奇を衒った新しいストーリー展開ではなく、王道のパターン小説なのだと思う。半沢が「倍返しだ!」のセリフを吐く場面は、本書のクライマックス。水戸黄門の印籠みたいなものなのである。

今後も半沢直樹シリーズは書き継がれていくのだろう。長くシリーズを続ければ、いずれ王道パターンを破壊する展開もあるかもしれない。でも、今しばらくは王道のワンパターンを丁寧に描いていくことで、読者の期待に応えてほしいと思うのである。

P.S.
ちなみに過去3作の半沢直樹シリーズ(「オレたちバブル入行組」、「オレたち花のバブル組」、「ロスジェネの逆襲」)は未読である。

 

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

 
オレたちバブル入行組

オレたちバブル入行組

 
オレたち花のバブル組 (文春文庫)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)

 
オレたち花のバブル組

オレたち花のバブル組

 
ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

 
ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

 
半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX

半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX

 
半沢直樹 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX

半沢直樹 -ディレクターズカット版- Blu-ray BOX