ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

今年も残りあとわずか。2014年の私的オススメ本を紹介します-【前編】

今年(2014年)も残りわずかである。なので、過去1年間に読んだ本の中から、私なりの十選をあげてみようと思う。過去に書いた各作品のレビューへのリンクも合わせて記載しておくので、具体的なレビューについては、各リンク先にアクセスしていただければと思います。

なお、以下2点についてはあらかじめお断りしておきます。

①ランキングは特に意識していません。
②1年間に私が読んだ本から選んでおり、今年出版された本という意味ではありません。

■「異形の愛」キャサリン・ダン
2014年に読んだ本の中で一番印象深い本は、キャサリン・ダンの「異形の愛」である。

こんな傑作が絶版で入手できないなんて!-キャサリン・ダン「異形の愛」 - ガタガタ書評ブログ

そもそも、この本を読むきっかけとなったのは、4月に開催された書評家・豊崎由美氏のイベント「読んでいいとも!ガイブンの輪」でトークゲストの松田青子氏が推薦する海外文学の1冊として、本書が紹介されたから。海外文学のメキキストとして信頼している豊崎氏も、松田氏に同調して「「異形の愛」は絶対に読むべき1冊」と激賞したこともあって、すぐに図書館で予約して読んだのである。

「異形=フリークス」を主人公にした、一歩間違えれば不謹慎な内容の小説にもなりかねないテーマでありながら、その欠点を感じさせない作品であり、純粋な愛をテーマにした作品として読むべきであろう。いつも読んでいる恋愛小説とはちょっと異なる、新たな発見がある小説だと思う。

■「愉楽」閻連科
2冊めに選んだのは、2014年のフランツ・カフカ賞を受賞した閻連科の「愉楽」である。

現代中国文学の傑作である-閻連科「愉楽」 - ガタガタ書評ブログ

1冊めにに選んだ「異形の愛」と同様、本書も「フリークス小説」である。障がい者だけが暮らす受活村。村人たちはそこで平和に暮らしていたが、県長がぶちあげたレーニンの遺体を購入して観光資源にするという計画を実現するための資金集めとして、受活村の住人たちが有する特殊能力を見世物とする絶技団が結成されたことで、彼らの生活や互いの信頼関係がおかしくなっていく。中国版マジックリアリズム小説の傑作だと思う。

■「ラストレター」さだまさし
私たち世代は、中学生、高校生くらいのときに誰もがラジオの深夜放送のヘビーリスナーだったと思う。そんな、古き良き深夜ラジオの時代を思い起こさせるのが、さだまさし「ラストレター」である。

この気持を届けよう。深夜放送の電波に乗せて-さだまさし「ラストレター」 - ガタガタ書評ブログ

著者のさだまさし氏自身が、いまや伝説といってもいい深夜放送「セイ!ヤング」のパーソナリティーとして、我々リスナーを楽しませていた方だけに、深夜ラジオの世界観が面白く描かれていて、楽しいと同時懐かしいという感情を呼び起こしてくれる。本作中に登場するラジオ番組内の企画も「セイ!ヤング」時代にさだ氏が実際に行っていた企画であり、当時の常連ハガキ職人が実名で登場するのも面白い。ラストで主人公の寺ちゃんが読むラストレターは泣ける。

■「英子の森」松田青子
2013年に「スタッキング可能」で私たち読者に鮮烈な印象を残し、Twitter文学賞国内部門の1位にも輝いた松田青子氏の第2作が「英子の森」である。

Twitter文学賞の2年連続受賞なるか?-松田青子「英子の森」 - ガタガタ書評ブログ

松田青子氏の作品には、底知れぬユーモアがある。前作「スタッキング可能」でも、幕間に挿入された短編「ウォータープルーフ嘘ばっかり」の畳み掛けるようなテンポの良さが、作品全体をリズムあるものにしていたように、「英子の森」でも各短編のリズム感が全体をテンポよくまとめているように思える。表題作「英子の森」では、主人公・英子の依存する世界(母親であったり、他人であったり)を森として表現されているし、「*写真はイメージです」には、全体にアイロニカルな空気が感じられて面白い。

■「紙つなげ!彼らが紙の本を造っている」佐々涼子
もうすぐ、東日本大震災から丸4年を迎えようとしている。地震津波の被害にあって壊滅的な状況に陥った東北太平洋沿岸の地域も、着実に復興が進んでいるが、まだ完全な復興には程遠いと言わざるをえない。

俺達が日本の出版界を支えているというプライドが復活へのモチベーション!-佐々涼子「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」 - ガタガタ書評ブログ

「紙つなげ!」は、宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場の被災からわずか半年で8号抄紙機と呼ばれる機械を再稼働させるまでのノンフィクションである。

本書では、壊滅的な被害を受け、誰もが工場の復活を絶望視していた石巻工場が半年後に再稼働したことが感動的であるが、それとともに、日本の出版を支える紙の約4割が石巻工場で製造されているという事実に驚愕した。日本の工場技術者たちの矜持と、日本の製紙技術の国際的な評価を改めて知らしめてくれた1冊である。

ということで、長くなりそうなのでまずは5冊を紹介した。明日、残りの5冊を紹介します。