ガタガタ書評ブログ

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女の子たちのヒエラルキーが怖い!-柚木麻子「王妃の帰還」

どのような組織でもヒエラルキーというものは存在していて、自然と階層化された社会が形成されている。ヒエラルキーがあることで成立するような社会もあって、例えば会社組織なんかは、社長を筆頭にして部長だの課長だのという階層が機能することでうまく回っていたりする。

王妃の帰還

王妃の帰還

 

本書に描かれるヒエラルキーはポジティブなものではない。そもそも学校の教室におけるヒエラルキーは本来存在しないものであって、クラスの仲間はフラットなお友達関係でなければならないと、教育者も親も考えてる。

しかし、現実は違う。最近では「スクールカースト」なる言葉が存在するように、教室内でのヒエラルキーは時に闇社会のような様相を呈したりする。本書はそこまでネガティブな社会を描くわけではないが、教室内でのヒエラルキーの崩壊がもたらす悲劇をユーモアで描いていることには変わりない。

ノリスケとあだ名される主人公は、クラスでは地味で大人しい子のグループに属する。クラスのヒエラルキー的には下の部類だ。ある日、学級委員会でひとりの女子生徒が別の子の腕時計を盗み、それを別の子の仕業とみせかけようとしたとして糾弾される。

ノリスケが秘かに王妃と呼ぶその子(滝沢さん)は、クラスのヒエラルキーでは最上位に位置していた。しかし、王妃は罪を自ら認め泣き崩れたことでその地位から陥落する。グループから爪弾きにされた王妃は、なかば押し付けられるようにノリスケのいる地味子グループに組み込まれてしまう。

しかし、王妃とノリスケたちには埋めようのない大きな溝があった。わがままで傍若無人な王妃の振る舞いに辟易したノリスケたちは、どうにかして王妃の人気を復活させ、元のポジションに戻そうと考える。

王妃は王妃の名にふさわしく周囲からちやほやされてきた勘違い女だ。その勘違い女がノリスケたちのような地味で堅実な下層女子とうまく付き合えるのか。話はそこから始まっていくのだが、当然のごとく王妃はノリスケたちとの関係をうまく気づくことができない。しかし、ノリスケたちの働きかけがあって次第にその人間性に変化が表れてくる。

周囲からお山の大将で持ち上げられて勘違いする子がいれば、自らはトップに立つわけではなく、裏で画策して翻弄することに執念を燃やす子もいる。わずか30人にも満たないであろうクラスの中に、まるで社会の縮図のような世界がグッと凝縮しているのである。著者は全編にそこはかとないユーモアを交えて描き出していくが、そのベースとなるヒエラルキー社会はとてもおそろしいものだ。時折背筋を凍りつかせ
ながら読み進めていく1冊である。