ガタガタ書評ブログ

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これこそが人間のリアルだ!-卯月妙子「人間仮免中」

卯月妙子という名前になんとなく見覚えがあった。

人間仮免中

人間仮免中

 
人間仮免中

人間仮免中

 

人間仮免中」を手に取ったのは、本書が2012年本の雑誌が選ぶベストテンで第1位を獲得したからだが、卯月妙子という名前をすでに知っているような気がした。そして、ネットのサイトなどから著者が結構有名な元AV女優だと知った。

本書の内容は実に衝撃的だ。著者は、20歳で出産、夫の会社が倒産して無職となり、精神を患ってしまう。様々なことをきっかけにAVの世界に身を投じた彼女は、ミミズを食べるなどのゲテモノ趣味の過激な作品で評判の女優となっていく。

彼女の統合失調症は、夫の自殺をきっかけに悪化。治療を受けてある程度回復したものの相変わらず不安定な精神状態が続く。そんな時に、行きつけの飲み屋で出会ったのが常連客だった60歳過ぎの初老の男性ボビーだった。著者は、一方的にボビーの家に押しかけて一緒に暮らし始める。実は、ボビー自身もいろいろと訳ありだったのだが、著者を受け入れる。

酒癖の悪いボビーと統合失調症の著者はしばしば喧嘩をし、そのたびに著者は精神を崩壊させる。そして
ついに、著者は歩道橋から発作的に飛び降り自殺を図る。一命は取り留めたが顔面から着地した衝撃で顔の骨を複雑骨折し、著者の顔面は完全に崩壊してしまう。

後半は、発作的な自殺から幾たびかの顔面修復手術を経て回復していく中で、入院中に著者が見た妄想、幻想の一部始終と退院後の壮絶なリハビリについて描かれている。

世の中にこんなことが実際にあるのだ、ということに驚愕する。読み進めていくにつれて次第に言葉を失い、自殺未遂を引き起こす場面では恐怖すら感じてしまう。そこからの壮絶な入院生活とリハビリでは、著者を見守る周囲の人々の対応に心が熱くなる。統合失調症という面倒な病気を抱えた著者を受け入れて接する家族。日頃は離れて暮らしているのに、いつのまにか母親想いの青年に成長している息子。そこには、毎年恒例の24時間テレビなんかでは絶対に取り上げられることのない、甘っちょろい感動話なんか完全に吹っ飛ぶくらいの強烈なインパクトがある。

結局のところ、帯にも書いているように「生きているって最高」なんだよね。ただ、それだけが心に残る。