ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

あの印象的な文字による演出。先駆者・市川崑の企み-小谷充「市川崑のタイポグラフィ 犬神家の一族の明朝体研究」

新世紀エヴァンゲリオン」や「古畑任三郎」で画面一杯に映し出されるタイトルバックや出演者クレジットは、視聴者に強烈な印象を与えている。このような巨大文字によるインパクトのあるクレジットの先駆者といえるのが、映画監督の市川崑であり、彼の作品「犬神家の一族」である。

市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究

市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究

 

本書は、「犬神家の一族」に代表される市川崑作品のクレジットにおけるタイポグラフィについて徹底的に考察した研究書である。クレジットに使用された文字の書体の追求から、特徴的なL字型の配置の謎まで、作品の内容には一切触れず、ただタイポグラフィにのみスポットを当てて論じている。非常にマニアックな論評である。

著者は、「犬神家の一族」で市川崑が導入した巨大文字による特徴的なクレジットに引きつけられる。「犬神家の一族」は、記念すべき角川映画の第一弾であり、その後数作にわたって製作される市川崑監督、石坂浩二主演の金田一耕助シリーズの第一作でもある。その映画において使用されたのが、写植を利用した巨大明朝体によるインパクトのあるタイトルクレジットであった。

著者は、使用されたのがどの種類の明朝体であるかを調査し、複数の書体が混在した形式であることをつきとめる。さらに、別の作品にも追及の手を伸ばし、市川崑がこだわってきたタイポグラフィの真髄に迫る。

市川崑は、もともとアニメ出身であり、美的センスにこだわった監督である。従来は製作会社の担当者に任せるようなクレジットの製作についても自身の手で手掛けていたという。それが、他の映画監督にも影響を与えるような特徴的なクレジットとなって結実した。

正直あまりにマニアックでよくわからない部分が多い。単なる映画好きとしての興味から本書を手に取ると困惑するに違いない。本書は、映画の研究書ではなく、文字の研究書なのである。その対象がたまたま市川崑という映画監督の作品であり、市川崑が映画界の巨匠であって、後世に残るような様々な名作を監督してきたという巡り合わせなのである。マニアというのは、そういうところまでこだわりを持つのだなと感心する一冊であった。

犬神家の一族  ブルーレイ [Blu-ray]

犬神家の一族 ブルーレイ [Blu-ray]

 
犬神家の一族 デジタル・リマスター版 [DVD]

犬神家の一族 デジタル・リマスター版 [DVD]

 
犬神家の一族 (角川文庫―金田一耕助ファイル)

犬神家の一族 (角川文庫―金田一耕助ファイル)