ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

見えを張ってもバレバレなんだよね-施川ユウキ「バーナード嬢曰く。」

本読みの生態としてあるあるなのかな、と思うのが、自分が読んでいない本を他の人が読んでいると、ちょっと悔しくなることだったりする。他に、読んでもいない本を読んだと見栄を張ってしまったり(その辺りは先日レビューしたピエール・バイヤール「読んでいない本について堂々と語る方法」を参照)して、後々後悔したりもする。

バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)

バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)

 
バーナード嬢曰く。 REXコミックス

バーナード嬢曰く。 REXコミックス

 

町田さわ子は、図書館にいて、いつも本を持っているのだが読んでいる訳ではない。最初の頃は同じ本(古今東西の名言を集めた名言集)をずっと読んでいた。彼女は、バーナード・ショーへのあこがれから周囲の人達に自分を“バーナード嬢”と呼ぶように要求しているが、彼女のツッコミ役である遠藤は縮めて“ド嬢”と呼んでいる。ド嬢の目標は、本を読んでいなくてもまるで読んでいるかのように振る舞うことであり、例えばジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」は、「あぁ、この本文庫化されたんだぁ」と言いたいがために本を買ったが、難しすぎて結局読めなかった。

前半は「○○曰く」とあるように、ド嬢が読んでいる名言集にある古今東西の名言を題材して、ド嬢がいかにそれらしい名言を吐けるかを考えることでギャグが成立していたが、中盤より少し前くらいのところから、本に対する登場人物の(というのは単純に著者の)思い入れが熱く語られることでギャグが成立していくような構成になっていく。

中でも神林しおりを軸にしたSFに関する蘊蓄はいちいち頷けてあるあるなのである。中でもグレッグ・イーガンの著作に対する意見は思わず納得させられてしまう説得力だ。ド嬢は神林さんに借りたイーガンの本が難してわからないと言う。すると神林さんは「イーガンの作品世界をすべて理解できる読者はほとんどいない」と言い、更には「作者のイーガンでさえ、書いている内容を理解できていないのではないかとさえ考えている」と持論を展開する。「んな、アホな!」と思うかもしれないが、実際にイーガン本を読んで理解不能に陥った経験を持つ読者なら「さもありなん!」と思えてしまうのだ。

他にも細かいネタが満載。思わず腹を抱えて笑ってしまったのは、

ジェームズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」のPOPとしてド嬢が書いた「よっ!二代目!」

いやいや「二代目」って(笑)

それと、海外文学の人名の複雑さに対するド嬢のつぶやき「ロシア人め!」と「南米め!」はよかった。これって、海外文学人名あるあるだよなぁ。