駅というのは物語に溢れた場所である。
ある者は、都会での生活に期待を膨らませて都会の駅に降り立つ。
ある者は、都会での生活に敗れ、疲れた身体と心を癒やすために故郷の駅に降り立つ。
駅はその街の顔である。
その街に暮らす人々やその街が故郷である人々にとっては、見慣れた顔であり懐かしい顔。
その街を訪れる人々にとっては、自分の来訪を最初に受け止めてくれる優しい顔。
駅に託された様々な役割を思い描きながら、本書に掲載された世界中の駅舎の数々を眺めていた。そこには、その駅に集い散会していく人々の毎日の営みが見えるような気がした。
本書には、世界中にある美しい造形の駅舎が34紹介されている。
荘厳なバロック様式の駅舎が印象深いベルギーのアントワープ中央駅やハリー・ポッターの映画にも使われたセント・パンクラス駅のような、中世ヨーロッパの伝統的建造物にも通じる様式美。
銀河鉄道999の発着駅のような近未来的な駅舎が印象深いオーストリアのフンガーブルク駅やドバイのバールジュマン駅には、無機質な冷たさを感じる一方でストレートにカッコイイと思う。
タイの「小さなかわいい」駅舎はホアヒン駅。
ストックホルムの地下鉄やナポリの地下鉄では、その地下空間を神秘的に、または情熱的に彩るアートな世界が広がり、芸術的な価値観を生み出している。
日本からは、北陸新幹線の開通を控えた金沢駅と日本の表玄関として開業100周年を迎えた東京駅が紹介されている。
金沢駅は、鼓門に厳かな能楽の世界観が表現され、加賀百万石の伝統美がある。
東京駅は、辰野金吾の設計による赤レンガの駅舎がやはり印象的で、日本の中央都市である東京の顔としての存在感を強く主張しているようだ。
東京駅は、辰野金吾の設計による赤レンガの駅舎がやはり印象的で、日本の中央都市である東京の顔としての存在感を強く主張しているようだ。
すべての駅が美しい。
ここに紹介されていない、身近な場所にある駅にも、もしかしたら美しさがあるのではないか。
ここに紹介されていない、身近な場所にある駅にも、もしかしたら美しさがあるのではないか。
これまでは、無意識に通り過ぎるだけだった駅を少し意識して眺めてみたい。
そんな気持ちになれる写真集である。
そんな気持ちになれる写真集である。