ガタガタ書評ブログ

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旅は道連れ?作家2人の海外珍道中-高木彬光、山田風太郎「風さん、高木さんの痛快ヨーロッパ紀行」

日本ミステリー界の重鎮である高木彬光(1920~1995、代表先「刺青殺人事件」、「白昼の死角」等)と山田風太郎(1922~2001、代表作「魔界転生」、「警視庁草紙」等)。二人は、デビュー時期も近く年齢も近いことから互いに交流に深めていた間柄。そんな二人が揃ってヨーロッパを旅したのは1965年8月のことである。日本を出発して当時のソ連、ヨーロッパ諸国を約1ヶ月にわたって歴訪している。高木彬光はその旅の記録を「飛びある記」という旅行記として出版、山田風太郎は日記に記録を残していた。

本書は、高木彬光「飛びある記」と山田風太郎の未発表旅日記を上下に並べて掲載することで、それぞれの作家が同じ出来事をどのように体感し、記録したかを比較するという実に面白い趣向の1冊になっている。

1965年といえば今から約50年前。当然ながら海外旅行など一般的ではなく、その費用も膨大な額である。そんな時代だから海外旅行に出かけた経験をもつ者などほとんどいない。そんな中、作家という職業の二人が海外旅行をし、その記録を残しているのはとても貴重なことではないだろうか。

両者の記述を並べてみるとその性格の違いというか、行動力の違いが垣間見られて楽しい。高木は行く先で結構な頻度で娼館を訪れている。あからさまな描写はないが、あきらかに買淫したと思しき様子もうかがえる。

これに対して山田の興味は食にあるようだ。船や飛行機などの中で提供された食事の内容を記録し、各国の食事事情を記録している。特に現地の食事が口に合わなかったということはなかったようで、むしろ日本食を要望する同行者を小馬鹿にしている様子もあったりする。

両者に共通して言えるのはその好奇心である。まず何よりあの時代に割と気軽に海外に出かけているのが驚きだ。山田に至ってはよく内容を確認しもしないで、高木の誘いを二つ返事で承諾している。海外に出かけても臆することもない。

最近、若者が海外に出ていかなくなってきているという。まだまだ日本が敗戦の余波を引きずっていて、それでも高度成長に邁進していた時代に積極的に海外での見聞を広げようとした二人の作家の存在は、そんな現代人たちの意識に一石を投じるのではないだろうか。

白昼の死角 (光文社文庫)

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白昼の死角 (光文社文庫)

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刺青殺人事件?新装版? (名探偵・神津恭介1/光文社文庫)
 
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