ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

モノクロームの静謐な世界-アイナール・トゥルコウスキィ「まっくら、奇妙にしずか」

ある日、どことも知れぬ海辺の町にひとりの男が現れて、町はずれに住みつく。
町の住人たちは突然現れた余所者の男を遠巻きに観察しつつ、しかし、決して近づこうとはしない。
やがて、男が町に魚を売りに来るようになる。
住人たちは男から魚を買うことはしないが、男がどうやって魚を獲っているのかは知りたくてたまらない。
交代で男の漁の様子を観察すると何やら特殊な方法で空から魚を捕獲している。
どうやら、男の家の辺りでは魚が空から降ってくるようだ。
そのことを知った住民は男を追い出して自分たちが魚を獲れるように画策するのだが…。
まっくら、奇妙にしずか

まっくら、奇妙にしずか

 

一読して、まず思ったのは、ショーン・タン「アライバル」との対比性だった。

「アライバル」は、異郷の地に新天地を求めた男が、言葉や文化の壁を乗り越えて生活の場所を確立し、故郷に残してきた家族を呼び寄せて幸せに暮らすというストーリーだ。

本書でも、ある男が見知らぬ町に現れてそこに住みつくことから物語がはじまるが、「アライバル」との決定的な違いは男を受け入れる住民たちの対応にある。

「アライバル」で、異郷の地にやってきた男は住民たちに温かく男を受け入れられ、男とその家族は、自分たちの居場所を作ることができた。

本書では、住民はきわめて排他的で男とは相容れようとしない。あげく、男を追い出してしまおうとする。この違いはどういうところから生まれるのだろう。
「アライバル」の著者ショーン・タンはオーストラリア人であるのに対して、本書の著者であるアイナール・トゥルコウスキィはドイツ人である。新大陸で移民社会であるオーストラリア人の気質とやや排他的とも思えるドイツ人気質の違いが作品に表れた。そう考えても良いだろうか。
 
少し本書の技術的なところも触れておきたい。本書は全編がモノクロのイラストで描かれている。これは、1本のシャープペンシルによって描かれているのだそうだ。シャープペンシルのみで描かれる緻密なイラストは見ていて圧倒されるような迫力を有するかと思えば、どこかほんわかと暖かい印象を受けるところもある。
アライバル

アライバル