ガタガタ書評ブログ

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没落と新たなる物語への繋がり-ダン・シモンズ「ハイペリオンの没落」

ハイペリオン”から“エンディミオン”へと続く叙事詩の中間地点。ハイペリオン二部作の愁眉を飾る作品である。前作では、ハイペリオンへの巡礼に赴く7人の、それぞれが抱える過去や想いが語られた。本書では、いよいよハイペリオンに存在する“時間の墓標”やシュライクの謎や、一大AIネットワークであるウェブやその中核にあるコアの存在が結びつき、破滅的とも思える結末に向かって突き進んでいく。 

ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

 
ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 

前作に比べるとアウスターとの戦争やハイペリオンにおける巡礼者たちの冒険譚がめまぐるしく語られ、緊迫感のある作品となっている。前作は、個々のエピソードは面白いものの全体的には淡々としたストーリー展開であり、正直なところ入り込めない部分も多々あったが、それらの物足りなさや消化不良感は、本書で一気に解消される。

構成も見事だ。まず、読者は“わたし”という語り部の存在に興味を惹かれる。彼は、セヴァーンという画家の人格を有するサイボーグなのだが、それ以前にキーツという詩人の人格を有している。キーツの人格を有するサイボーグとは、巡礼者の一人、女探偵ブローン・レイミアのエピソードに出てきた依頼人であり恋人であるジョニーと同じである。そして、この同じ人格を有するセヴァーンは、そのことにより巡礼者たちの様子を夢で見ることができるという設定になっている。巡礼者たちをハイペリオンに送り出したCEOグラッドストーンは、彼を通じてハイペリオンの様子を知り、自らが仕掛けた破滅への道を歩んでいく。

本書の根底にあるのは、人間の脆さであろうか。グラッドストーンは、AIテクノコアを操り、自らの才覚により連邦の平和を画策したつもりであったが、実際にはAIテクノコアに逆に操られている。そして、最後には連邦を破壊することになる。しかし、それはAIテクノコアを道連れにした最後の知性であり、彼女の決断は最良の決断として描かれているように思う。

本書を読んで感じたのが、人間対AIの構図である。これは、その後のマトリックスなどの世界観に影響を与えているのではないだろうか。