ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「生きることに意味がある」と教えてくれる-天童荒太「永遠の仔」

読み終えて、実は意外と救われる作品なのだと思った。親による子供の虐待。心を病んだ少年、少女。トラウマを抱え、誰にも救われることもなく成長する苦しさ。素直な気持ちを伝えられず結局相手を傷つけるだけの恋。だが、最後に語りかける言葉でそれはすべて救われるのではないか。「生きていてもいいんだよ」とひと言で。

 

多摩桜病院の老年科に勤務する看護婦の久坂優希は、仕事一筋の女性として周りから見られていた。しかし、それは自分を繕う虚勢であり、優希自身は少女時代の暗いトラウマを抱えたままに生きていた。

 

少女時代、彼女は四国にある双海病院の児童精神科に入院していた。心を閉ざす彼女の前に現れたふたりの少年。動物園に例えられた第8病棟で少年たちはその病状に因んだ動物の名前で呼ばれていた。ジラフとモウル。母親にタバコの火を押しつけられ、キリンの模様のような火傷痕を持つ有沢梁平はジラフと呼ばれ、男癖の悪い母に育てられ暗闇を極度に怖れる長瀬(勝田)笙一郎はモウルと呼ばれた。

 

優希とジラフとモウル。3人は、それぞれの心を語り合い、ある計画を決行する。それは、優希の父を殺害することだった。双海病院の退院登山でそれは実行された。優希の父の死は事故とされ、退院した優希、ジラフ、モウルは離ればなれとなる。そして、17年の歳月を経て3人が再会したとき、彼らを取り巻く環境の中で事件が起きていく。

 

この本を最初に読んだのは、刊行されて間もなくの1999年の春だった。当時から、親による子供の虐待事件は、少なからず話題になっていたように記憶しているが、それでもなお虐待を“しつけ”と見なす風潮も同程度に存在していたように思う。その後、児童虐待に関する法律が整備され、虐待を悪と見なすように時代は変化してきた。今回、本書を再読してみて、改めて実の親子による虐待のつらさ、せつなさを痛感せざるを得なかった。 

  

永遠の仔〈1〉再会 (幻冬舎文庫)

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永遠の仔〈2〉秘密 (幻冬舎文庫)

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永遠の仔〈3〉告白 (幻冬舎文庫)

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永遠の仔〈4〉抱擁 (幻冬舎文庫)

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永遠の仔〈5〉言葉 (幻冬舎文庫)

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