ガタガタ書評ブログ

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人生は様々な欲望を学ぶ場所-山田詠美「学問」を読む

性の芽生えを4人の少年少女を主人公に描きあげた傑作である。ラストは思わず涙がこぼれた。

 

物語は静岡県の架空の地方都市美流間市を舞台に、心太、無量、千穂、仁美の4人の少年少女の小学生から高校生までの成長を描いている。心太は地元育ちで人望も厚く、みんなの人気者。無量は地元の病院の御曹司でいつもお菓子を持ち歩いて絶えず口にしている(食欲の象徴としてのキャラクター)。千穂は仁美と同じ社宅に暮らす、地元にしてみれば異分子。どこでもすぐに眠ってしまう(睡眠欲の象徴としてのキャラクター)。仁美は、初めての出会いから心太に心を奪われる。やがて訪れる性への目覚め。最初はよくわからなかった感覚が、成長するにしたがって自然と自覚されていく様子が丹念に描かれる。

 

「私、欲望の愛弟子なの」という仁美が自覚する心太への思いは、人間が誰しも所有している様々な欲求に対する思いと密接に繋がる。毎日新聞のインタビューで著者の山田詠美は、自分なりの「ポルノ」が書きたかったと答えている。

「性欲の他にも、食欲や睡眠欲、人間だけにしかない欲望のポルノもあっていい。それを私の言葉で書いていこうと思ったんです。セックスのことだけじゃなくてもポルノは成立するのか、と考えたのが最初です」 

 

タイトルの「学問」も意味深だ。「メインの欲望を持っていると、付随してくるいろんな欲望が現れて、人とのかかわり合いで、どんどん欲望が多様化していく。それを学んで人が大人になっていく『学問』でもあります。死に至るまで、ずっと学び続けなくてはいけないという意味で、タイトルをつけました」と著者は言う。

 

読み終えて、欲望というものについて考えさせられる1冊である。 

学問 (新潮文庫)

学問 (新潮文庫)