タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「レス」アンドリュー・ショーン・グリア/上岡伸雄訳/早川書房-元恋人の結婚式にを欠席するために世界をめぐる旅に出たアーサー・レス。中年作家の出会いと気づき、そして再生の物語

// リンク 「違う! アーサー、違うって、その逆だよ! 僕は成功だったって言ってるんだ。喜びと支援と友情の二十年っていうのは成功だ。何であれ、ほかの人と二十年一緒に過ごしたのは成功なんだよ。バンドが二十年、活動を続けたら奇跡だろ。お笑いの二人…

「今日もパリの猫は考え中 黒猫エドガーの400日」フレデリック・プイエ+シュジー・ジュファ/坂田雪子訳/大和書房-猫を飼っているみなさん、あなたのおうちの猫もエドガーみたいに考えているかもしれませんよ

// リンク エドガーは6ヶ月の子猫。フレデリック・プイエ+シュジー・ジェファ著、坂田雪子訳「今日もパリの猫は考え中 黒猫エドガーの400日」は、エドガーが“アホ家族”と呼ぶ一家との日々を、エドガーの目線で語る物語だ。 物語は、「とらわれて1日目」か…

「エレベーター」ジェイソン・レナルズ/青木千鶴訳/早川書房-兄を殺された少年ウィルが復讐に向かうために乗り込んでエレベーターで経験する出来事。ラストの言葉に心が震える。

// リンク #掟 何があろうと、けっして泣いてはならない。 何があろうと、けっして密告してはならない。 愛する誰かが殺されたなら、殺したやつを見つけだし、かならずそいつを殺さなければならない。 兄のショーンが殺された。ウィルは、掟にしたがって兄…

「ロンドン・ジャングルブック」バッジュ・シャーム作/三輪舎-色鮮やかに描かれる作品たち。そこに表現される作者のイメージ。それらを引き立たせる本づくりの技

// リンク 本の感想を書くのに、こういう話から始めるのは違うと言われてしまうかもしれませんが、この本についてはこの話を抜きにはできないと思うので、そこから始めます。 紙の本ってすばらしい! 何を言っているのか? と思われたかもしれません。これは…

「わたしがいどんだ戦い1940年」キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー著/大作道子訳/評論社-エイダの身体の回復と心の成長を見守るように読みました。

// リンク キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(大作道子訳)「わたしがいどんだ戦い1940年」は、2018年度の「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書に選ばれた「わたしがいどんだ戦い1939年」の続編であり完結編になる作品です。 s-taka1…

「ペーパータウン」ジョン・グリーン著/金原瑞人訳/岩波書店-自由奔放な少女に振り回されるおとなしい少年。Qとマーゴの関係は、どこにでもありそうだからこそ、放っておかれない気持ちにさせられる。

// リンク まだ本当に小さな子どもの頃に、とても仲の良い女の子がいたことだけを覚えている。 覚えているのは仲の良い女の子がいたことだけ。その子の名前も顔も全然思い出せない。幼稚園に通っていたときによく一緒に遊んだらしいことはなんとなく覚えてい…

「アナーキストの銀行家-フェルナンド・ペソア短編集」フェルナンド・ペソア著/近藤紀子訳/彩流社-はじめてのペソア。最初の一文で魅了されてしまいました。

// リンク それは、第十五回をむかえるベルリン美食協会定例会の席上のことであった。 これは、本書「アナーキストの銀行家-フェルナンド・ペソア短編集」の冒頭に収録されている「独創的な晩餐」の書き出しである。パッと読むと普通のありがちな書き出しな…

「バット・ビューティフル」ジェフ・ダイヤー/村上春樹訳/新潮社-ミュージシャンたちのエピソードの数々は、ジャズに興味をもつ入口になると思う。

// リンク 音楽にはあまり詳しくない。ジャズについても、そういう音楽のジャンルは知っていても、どういうプレイヤーがいたのかなどはよくわからない。だから、『はじめての海外文学vol.4』で金原瑞人さんが、本書「バット・ビューティフル」を推薦していな…

「路上のストライカー」マイケル・ウィリアムズ〔著〕/さくまゆみこ〔訳〕/岩波書店-独裁政権に家族を殺され、命がけで逃げ込んだ南アフリカでは外国人として憎悪の対象となったデオ。彼を救ったのはサッカーだった。

// リンク サッカーは、アフリカで人気のスポーツだという。ボールひとつあればどこでも楽しめるし、ボールがなくても新聞やビニールを集めて丸めたものをボールに見立てればよい。 マイケル・ウィリアムズ「路上のストライカー」も、サッカーを題材にした物…

「わたしはイザベル」エイミー・ウィッティング〔著〕/井上里〔訳〕(岩波書店)-毒親に否定され続けたイザベルを救ったのは読書だった。言葉を得ることでイザベルは成長する。

// リンク 毒親とは、過干渉や暴言・暴力などで、子どもを思い通りに支配したり、自分を優先して子どもを構わなかったりする「毒になる親」のことを言う。 これは、2019年4月にNHKの「クローズアップ現代」で放映された『毒親って!? 親子関係どうすれば・…

「ある奴隷少女に起こった出来事」ハリエット・アン・ジェイコブズ〔著〕/堀越ゆき〔訳〕/新潮社〔文庫〕-奴隷として生まれ、奴隷として生きることを運命づけられた少女は、自らの自由を求めて闘った

// リンク わたしは奴隷として生まれた。 その短い言葉から、ひとりの黒人奴隷少女の闘いの記録は始まっている。 「ある奴隷少女に起こった出来事」は、いまからおよそ150年前の1861年に刊行された作品である。その内容は、あまりに衝撃的で、これがノンフィ…

「新装版プラテーロとわたし」J.R.ヒメナス・著/伊藤武義、伊藤百合子・訳/長新太・絵(理論社)-嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、ささやかな日々のことも、いつもプラテーロがそばにいた。

// リンク プラテーロは、小さくて、ふんわりとした綿毛のロバ。あまりふんわりしているので、そのからだは、まるで綿ばかりでできていて、骨なんかないみたいだ。けれど、その瞳のきらめきは、かたい黒水晶のカブト虫のよう。 J.R.ヒメナス「プラテーロとわ…

「刑罰」フェルディナント・フォン・シーラッハ著/酒寄進一訳(東京創元社)-小説を書くことがシーラッハ氏が自らに課した『刑罰』なのかもしれない。

// リンク 「犯罪」「罪悪」に続くフェルディナント・フォン・シーラッハの短編集シリーズの第3作にして完結編となる作品である。モニター募集に当選して、刊行前のゲラの段階で読む機会をいただいたのだが、本格的なレビューを書くのが刊行後になってしまっ…

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」北村紗衣・著(書肆侃侃房)-フェミニスト視点で古今東西の小説、映画、舞台を論じる。視点を絞ることで見えてくる作品の新しい世界に興味津々。

// リンク 発売前からTwitterで話題になっていて、「なんだか面白そう」と思っていた北村紗衣「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」を読んだ。思っていた通り、いや思っていた以上に面白かった。 「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」は、Webメディア『wezzy』…

「観光」ラッタウット・ラープチャルーンサップ〔著〕/古屋美登里〔訳〕(早川書房)-タイという国が内部に有する影をみせてくれる短編集

観光 (ハヤカワepi文庫) 作者: ラッタウットラープチャルーンサップ,Rattawut Lapcharoensap,古屋美登里 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/08/30 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 59回 この商品を含むブログ (28件) を見る 『微笑みの国』と呼ば…

「フィフティ・ピープル」チョン・セラン・著/斎藤真理子・訳(亜紀書房)-ひとりにひとつの物語。50人に50の物語。人と人が交わり、重なり、人生の物語が生み出される。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり) 作者: チョン・セラン,斎藤真理子 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2018/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 人はみな、ひとりひとりにそれぞれの物語がある。ひとつひと…

「ふたりのロッテ」エーリヒ・ケストナー・著/池田香代子・訳(岩波書店)-偶然に再会したふたごの姉妹は、秘密の計画で家族を取り戻せるのか?

ふたりのロッテ (岩波少年文庫) 作者: エーリヒケストナー,ヴァルター・トリアー,Erich K¨astner,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/06/16 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 17回 この商品を含むブログ (31件) を見る 女の子はぎょう…

温又柔、斎藤真理子、中村菜穂、藤井光、藤野可織、松田青子、宮下遼・文/長崎訓子・絵「本にまつわる世界のことば」(創元社)-世界には、本にまつわる言葉が溢れている

本にまつわる世界のことば 作者: 温又柔,斎藤真理子,中村菜穂,藤井光,藤野可織,松田青子,宮下遼,長崎訓子 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2019/05/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私の家には本が溢れている。本棚に入り切らない本が床に…

ジョン・ボイン/原田勝訳「ヒトラーと暮らした少年」(あすなろ書房)-純真な少年がヒトラーと出会ったことで失ったもの。すべてが終わり絶望の中で取り戻したもの。

ヒトラーと暮らした少年 作者: ジョン・ボイン,原田勝 出版社/メーカー: あすなろ書房 発売日: 2018/02/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 少年がヒトラーと出会ったとき、彼はまだ7歳だった。 「ヒトラーと暮らした少年」は、7歳の少年だった…

栗林佐知編・著/なかちきさ、志賀泉、ほか著「吟醸掌篇vol.3」(けいこう舎)-知らなかった作家の存在に触れ、その才能に触れることの至福を味わえる短篇アンソロジーの第3弾

吟醸掌篇vol.3 作者: なかちきか,志賀泉,空知たゆたさ,久栖博季,岡部篠,愚銀,踏,尾崎日菜子,岩槻優佑,寺田和代,h.c.humsi,斎藤真理子,河内卓,栗林佐知,山?まどか,木村千穂,耳湯,坂本クラシック,こざさりみ,有冨禎子,たらこパンダ 出版社/メーカー: けいこう…

栗林佐知編/大原鮎美、志賀泉、ほか著「吟醸掌篇vol.2」(けいこう舎)-知る人ぞ知る作家たちの作品を集めた短篇アンソロジーの第2集。今回も良質な作品が集まっています。

吟醸掌篇 vol.2 作者: 栗林佐知大原鮎美志賀泉なかちきか坂野五百久栖博季,空知たゆたさ愚銀ともよんだ踏江川盾雄高坂元顕,栗林佐知,山?まどか木村千穂たらこパンダ坂本ラドンセンター,こざさりみ耳湯 PLUMP PLUM 出版社/メーカー: けいこう舎 発売日: 2017/…

栗林佐知編/志賀泉、柄澤昌幸、ほか著「吟醸掌篇vol.1」(けいこう舎)-『ほかでは読めない作家』たちによる短編アンソロジー&読書ガイド

吟醸掌篇 vol.1 作者: 志賀泉,山脇千史,柄澤昌幸,小沢真理子,広瀬心二郎,栗林佐知,江川盾雄,空知たゆたさ,たまご猫,山?まどか,木村千穂,有田匡,北沢錨,坂本ラドンセンター,こざさりみ,耳湯 出版社/メーカー: けいこう舎 発売日: 2016/05/09 メディア: 単行本…

カトリーヌ・カストロ原作、カンタン・ズゥティオン作画/原正人訳「ナタンと呼んで 少女の身体で生まれた少年」(花伝社)-フランス発のバンド・デシネ。身体と心の性にギャップを感じるトランスジェンダーについて、その悩みや苦しみを知り、理解するために必要な作品。

ナタンと呼んで―少女の身体で生まれた少年 作者: カトリーヌカストロ,Catherine Castro,カンタンズゥティオン,Quentin Zuttion,原正人 出版社/メーカー: 花伝社 発売日: 2019/04/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「ナタンと呼んで」の主人公…

リアノン・ネイヴィン/越前敏弥訳「おやすみの歌が消えて」(集英社)-ある日学校を銃撃犯が襲った。6歳の少年の目線で記される事件の恐怖、その後の家族の苦悩、そして大人たちの崩壊と再生

おやすみの歌が消えて 作者: リアノン・ネイヴィン,越前敏弥 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/01/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る まっくらなクローゼットの中で、ザックたちは息をひそめていた。バン、バン、バンと銃撃犯が放つ銃声…

ショーン・タン/岸本佐知子訳「セミ」(河出書房新社)-タカラ~ム セミ よむ。胸 あつくなる。ニンゲンの しあわせ かんがえる。トゥク トゥク トゥク!

セミ 作者: ショーン・タン,岸本佐知子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/05/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 2019年5月11日から7月28日の期間、東京・上井草にある『ちひろ美術館』で「ショーン・タンの世界展」が開催されます…

田房永子責任編集「エトセトラvol.1 特集コンビニからエロ本がなくなる日」(エトセトラブックス)-毎号新しい編集長によって作られるフェミマガジンの創刊号。テーマは「コンビニの店頭からエロ本がなくなる日」

www.e-hon.ne.jp // 5月の『文学フリマ東京』で購入した中の一冊。「毎号、新しい編集長がいま伝えたいテーマを特集するフェミマガジン」(裏表紙より抜粋)の創刊号になる。編集長は、漫画家でライターの田房永子さん。テーマは『コンビニからエロ本がなく…

フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳「罪悪」(東京創元社)-罪の意識とはどういうものなのか。

www.e-hon.ne.jp // 人は、自分が犯した罪の重さをどう考えるのだろうか。 小さな罪であっても、深く罪悪感に苛まれて苦悩し続ける人がある。大きく重い罪を犯しても平然としていられる人がある。 フェルディナント・フォン・シーラッハの短編シリーズ第2作…

フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳「犯罪」(東京創元社)-人はなぜ罪を犯してしまうのか。それぞれの事情、それぞれの人生をみつめる11の物語

www.e-hon.ne.jp // 先日(2019年4月19日)、『はじめての海外文学』の人気企画『はじめての読書会』の番外編として翻訳家酒寄進一さんをお迎えしたイベントが開催されました。その課題図書となったのが、フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」です…

ニコラ・ド・イルシング/末松氷海子訳、三原紫野絵「なんでもただ会社」(日本標準)-なんでもタダ!なんと甘美な言葉!でも、甘い言葉には必ず裏があるよ、気をつけて!

www.e-hon.ne.jp // 無料!タダ! なんと心惹かれるワードなんでしょう。ランチタイムに入った定食屋さんでごはんと味噌汁のおかわりが無料!とか、ラーメン屋さんで大盛無料!とか、今ならエアコンの取付工事費が無料!とか、世の中には無料・タダが溢れて…

ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳「完訳オズの魔法使い」(復刊ドットコム)-よく知っている物語ですが、本ははじめて読みました

www.e-hon.ne.jp // 「オズの魔法使い」は、映像作品では観たことがあっても本を読んだことがありませんでした。今回、『はじめての海外文学vol.4』で訳者でもある宮坂宏美さんが推薦したので読んでみました。 カンザス州で、お百姓のヘンリーおじさん、奥さ…