タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「わたしはイザベル」エイミー・ウィッティング〔著〕/井上里〔訳〕(岩波書店)-毒親に否定され続けたイザベルを救ったのは読書だった。言葉を得ることでイザベルは成長する。

// リンク 毒親とは、過干渉や暴言・暴力などで、子どもを思い通りに支配したり、自分を優先して子どもを構わなかったりする「毒になる親」のことを言う。 これは、2019年4月にNHKの「クローズアップ現代」で放映された『毒親って!? 親子関係どうすれば・…

「ある奴隷少女に起こった出来事」ハリエット・アン・ジェイコブズ〔著〕/堀越ゆき〔訳〕/新潮社〔文庫〕-奴隷として生まれ、奴隷として生きることを運命づけられた少女は、自らの自由を求めて闘った

// リンク わたしは奴隷として生まれた。 その短い言葉から、ひとりの黒人奴隷少女の闘いの記録は始まっている。 「ある奴隷少女に起こった出来事」は、いまからおよそ150年前の1861年に刊行された作品である。その内容は、あまりに衝撃的で、これがノンフィ…

「新装版プラテーロとわたし」J.R.ヒメナス・著/伊藤武義、伊藤百合子・訳/長新太・絵(理論社)-嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、ささやかな日々のことも、いつもプラテーロがそばにいた。

// リンク プラテーロは、小さくて、ふんわりとした綿毛のロバ。あまりふんわりしているので、そのからだは、まるで綿ばかりでできていて、骨なんかないみたいだ。けれど、その瞳のきらめきは、かたい黒水晶のカブト虫のよう。 J.R.ヒメナス「プラテーロとわ…

「刑罰」フェルディナント・フォン・シーラッハ著/酒寄進一訳(東京創元社)-小説を書くことがシーラッハ氏が自らに課した『刑罰』なのかもしれない。

// リンク 「犯罪」「罪悪」に続くフェルディナント・フォン・シーラッハの短編集シリーズの第3作にして完結編となる作品である。モニター募集に当選して、刊行前のゲラの段階で読む機会をいただいたのだが、本格的なレビューを書くのが刊行後になってしまっ…

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」北村紗衣・著(書肆侃侃房)-フェミニスト視点で古今東西の小説、映画、舞台を論じる。視点を絞ることで見えてくる作品の新しい世界に興味津々。

// リンク 発売前からTwitterで話題になっていて、「なんだか面白そう」と思っていた北村紗衣「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」を読んだ。思っていた通り、いや思っていた以上に面白かった。 「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」は、Webメディア『wezzy』…

「観光」ラッタウット・ラープチャルーンサップ〔著〕/古屋美登里〔訳〕(早川書房)-タイという国が内部に有する影をみせてくれる短編集

観光 (ハヤカワepi文庫) 作者: ラッタウットラープチャルーンサップ,Rattawut Lapcharoensap,古屋美登里 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/08/30 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 59回 この商品を含むブログ (28件) を見る 『微笑みの国』と呼ば…

「フィフティ・ピープル」チョン・セラン・著/斎藤真理子・訳(亜紀書房)-ひとりにひとつの物語。50人に50の物語。人と人が交わり、重なり、人生の物語が生み出される。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり) 作者: チョン・セラン,斎藤真理子 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2018/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 人はみな、ひとりひとりにそれぞれの物語がある。ひとつひと…

「ふたりのロッテ」エーリヒ・ケストナー・著/池田香代子・訳(岩波書店)-偶然に再会したふたごの姉妹は、秘密の計画で家族を取り戻せるのか?

ふたりのロッテ (岩波少年文庫) 作者: エーリヒケストナー,ヴァルター・トリアー,Erich K¨astner,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/06/16 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 17回 この商品を含むブログ (31件) を見る 女の子はぎょう…

温又柔、斎藤真理子、中村菜穂、藤井光、藤野可織、松田青子、宮下遼・文/長崎訓子・絵「本にまつわる世界のことば」(創元社)-世界には、本にまつわる言葉が溢れている

本にまつわる世界のことば 作者: 温又柔,斎藤真理子,中村菜穂,藤井光,藤野可織,松田青子,宮下遼,長崎訓子 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2019/05/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私の家には本が溢れている。本棚に入り切らない本が床に…

ジョン・ボイン/原田勝訳「ヒトラーと暮らした少年」(あすなろ書房)-純真な少年がヒトラーと出会ったことで失ったもの。すべてが終わり絶望の中で取り戻したもの。

ヒトラーと暮らした少年 作者: ジョン・ボイン,原田勝 出版社/メーカー: あすなろ書房 発売日: 2018/02/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 少年がヒトラーと出会ったとき、彼はまだ7歳だった。 「ヒトラーと暮らした少年」は、7歳の少年だった…

栗林佐知編・著/なかちきさ、志賀泉、ほか著「吟醸掌篇vol.3」(けいこう舎)-知らなかった作家の存在に触れ、その才能に触れることの至福を味わえる短篇アンソロジーの第3弾

吟醸掌篇vol.3 作者: なかちきか,志賀泉,空知たゆたさ,久栖博季,岡部篠,愚銀,踏,尾崎日菜子,岩槻優佑,寺田和代,h.c.humsi,斎藤真理子,河内卓,栗林佐知,山?まどか,木村千穂,耳湯,坂本クラシック,こざさりみ,有冨禎子,たらこパンダ 出版社/メーカー: けいこう…

栗林佐知編/大原鮎美、志賀泉、ほか著「吟醸掌篇vol.2」(けいこう舎)-知る人ぞ知る作家たちの作品を集めた短篇アンソロジーの第2集。今回も良質な作品が集まっています。

吟醸掌篇 vol.2 作者: 栗林佐知大原鮎美志賀泉なかちきか坂野五百久栖博季,空知たゆたさ愚銀ともよんだ踏江川盾雄高坂元顕,栗林佐知,山?まどか木村千穂たらこパンダ坂本ラドンセンター,こざさりみ耳湯 PLUMP PLUM 出版社/メーカー: けいこう舎 発売日: 2017/…

栗林佐知編/志賀泉、柄澤昌幸、ほか著「吟醸掌篇vol.1」(けいこう舎)-『ほかでは読めない作家』たちによる短編アンソロジー&読書ガイド

吟醸掌篇 vol.1 作者: 志賀泉,山脇千史,柄澤昌幸,小沢真理子,広瀬心二郎,栗林佐知,江川盾雄,空知たゆたさ,たまご猫,山?まどか,木村千穂,有田匡,北沢錨,坂本ラドンセンター,こざさりみ,耳湯 出版社/メーカー: けいこう舎 発売日: 2016/05/09 メディア: 単行本…

カトリーヌ・カストロ原作、カンタン・ズゥティオン作画/原正人訳「ナタンと呼んで 少女の身体で生まれた少年」(花伝社)-フランス発のバンド・デシネ。身体と心の性にギャップを感じるトランスジェンダーについて、その悩みや苦しみを知り、理解するために必要な作品。

ナタンと呼んで―少女の身体で生まれた少年 作者: カトリーヌカストロ,Catherine Castro,カンタンズゥティオン,Quentin Zuttion,原正人 出版社/メーカー: 花伝社 発売日: 2019/04/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「ナタンと呼んで」の主人公…

リアノン・ネイヴィン/越前敏弥訳「おやすみの歌が消えて」(集英社)-ある日学校を銃撃犯が襲った。6歳の少年の目線で記される事件の恐怖、その後の家族の苦悩、そして大人たちの崩壊と再生

おやすみの歌が消えて 作者: リアノン・ネイヴィン,越前敏弥 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/01/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る まっくらなクローゼットの中で、ザックたちは息をひそめていた。バン、バン、バンと銃撃犯が放つ銃声…

ショーン・タン/岸本佐知子訳「セミ」(河出書房新社)-タカラ~ム セミ よむ。胸 あつくなる。ニンゲンの しあわせ かんがえる。トゥク トゥク トゥク!

セミ 作者: ショーン・タン,岸本佐知子 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2019/05/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 2019年5月11日から7月28日の期間、東京・上井草にある『ちひろ美術館』で「ショーン・タンの世界展」が開催されます…

田房永子責任編集「エトセトラvol.1 特集コンビニからエロ本がなくなる日」(エトセトラブックス)-毎号新しい編集長によって作られるフェミマガジンの創刊号。テーマは「コンビニの店頭からエロ本がなくなる日」

www.e-hon.ne.jp // 5月の『文学フリマ東京』で購入した中の一冊。「毎号、新しい編集長がいま伝えたいテーマを特集するフェミマガジン」(裏表紙より抜粋)の創刊号になる。編集長は、漫画家でライターの田房永子さん。テーマは『コンビニからエロ本がなく…

フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳「罪悪」(東京創元社)-罪の意識とはどういうものなのか。

www.e-hon.ne.jp // 人は、自分が犯した罪の重さをどう考えるのだろうか。 小さな罪であっても、深く罪悪感に苛まれて苦悩し続ける人がある。大きく重い罪を犯しても平然としていられる人がある。 フェルディナント・フォン・シーラッハの短編シリーズ第2作…

フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳「犯罪」(東京創元社)-人はなぜ罪を犯してしまうのか。それぞれの事情、それぞれの人生をみつめる11の物語

www.e-hon.ne.jp // 先日(2019年4月19日)、『はじめての海外文学』の人気企画『はじめての読書会』の番外編として翻訳家酒寄進一さんをお迎えしたイベントが開催されました。その課題図書となったのが、フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」です…

ニコラ・ド・イルシング/末松氷海子訳、三原紫野絵「なんでもただ会社」(日本標準)-なんでもタダ!なんと甘美な言葉!でも、甘い言葉には必ず裏があるよ、気をつけて!

www.e-hon.ne.jp // 無料!タダ! なんと心惹かれるワードなんでしょう。ランチタイムに入った定食屋さんでごはんと味噌汁のおかわりが無料!とか、ラーメン屋さんで大盛無料!とか、今ならエアコンの取付工事費が無料!とか、世の中には無料・タダが溢れて…

ライマン・フランク・ボーム/宮坂宏美訳「完訳オズの魔法使い」(復刊ドットコム)-よく知っている物語ですが、本ははじめて読みました

www.e-hon.ne.jp // 「オズの魔法使い」は、映像作品では観たことがあっても本を読んだことがありませんでした。今回、『はじめての海外文学vol.4』で訳者でもある宮坂宏美さんが推薦したので読んでみました。 カンザス州で、お百姓のヘンリーおじさん、奥さ…

友田とん「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1 まだ歩きださない」(代わりに読む人)-「『百年の孤独』をか代わりに読む」の友田とん、今度はパリのガイドブックで東京を歩く!?

パリのガイドブックで東京の町を闊歩する: まだ歩きださない (1) 作者: 友田とん 出版社/メーカー: 代わりに読む人 発売日: 2019/04/22 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る // 「『百年の孤独』を代わりに読む」という、なんとも興味をそそられるタ…

ロバート・ニュートン・ベック/金原瑞人訳「豚の死なない日」(白水社)-父と息子をつなぐ強くて深い絆の物語

www.e-hon.ne.jp // 父、ヘイヴン・ペックに……父は寡黙で穏やかで豚を殺すのが仕事だった。 ロバート・ニュートン・ベック「豚の死なない日」は、息子と父の物語だ。 主人公のロバートは、著者ロバート・ニュートン・ベック自身である。「豚の死なない日」は…

ハン・ガン/斎藤真理子訳「すべての、白いものたちの」(河出書房新社)-白きもの、それは、儚くて、柔らかくて、優しくて、少し怖い

www.e-hon.ne.jp // 小説というよりは、ひとつひとつが美しい詩歌のような、胸にじんわりと染み入ってくるような作品だと感じた。 そう、これは『作品』だ。「小説」であり「物語」でありながら「小説」でも「物語」でもない。『作品』なのである。 芸術的と…

チョ・ナムジュ/斎藤真理子訳「82年生まれ、キム・ジヨン」(筑摩書房)-どれだけ理解したつもりでも、どこかに男性目線のバイアスが生まれる。キム・ジヨンを診察しカルテを記した精神科医と私は『同じ穴の狢』なのだ

www.e-hon.ne.jp // 韓国で100万部を突破する大ベストセラーとなり、日本でも2018年12月に刊行後10万部を超えるベストセラーとなった話題の本である。 キム・ジヨン氏、三十三歳。三年前に結婚し、昨年、女の子を出産した。 こんな、ちょっと無機質とも思え…

鹿子裕文「へろへろ~雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々」(ナナロク社、筑摩書房(文庫))-読んでいる間は、ただただ笑っていた。でもそれで終わりじゃなかった。読み終わったときには胸に深く刻まれるものが残されていた。

へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 作者: 鹿子裕文,装画:奥村門土(モンドくん),AD:寄藤文平+鈴木千佳子 出版社/メーカー: ナナロク社 発売日: 2015/12/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る // ナナロク社版の「へろへ…

J・G・バラード/南山宏「ハロー、アメリカ」(東京創元社)-アメリカ崩壊から1世紀。荒廃し砂漠と化した大地が見せつける人間の狂気。

www.e-hon.ne.jp // イギリスから大西洋を横断してアメリカ大陸を目指した蒸気船アポロ号がマンハッタン島に到着する場面からJ・G・バラードのSF長編「ハロー、アメリカ」は始まる。 書き出しからは、この物語の時代設定がアメリカ大陸がコロンブスによって…

ペネロピ・フィッツジェラルド/山本やよい訳「ブックショップ」(ハーパーコリンズ・ジャパン)-海辺の街に小さな本屋を開くのが彼女の夢。ほんのささやかな夢だった。

www.e-hon.ne.jp ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)(Amazonで購入) ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション 8) [ ペネロピ・フィッツジェラルド ](楽天ブックスで購入) 本書は、映画「マイブックショップ」の原作である。著者…

吉澤康子+和爾桃子編訳/アーサー・ラッカム挿絵「夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話」(平凡社)-子どもの頃、寝る前に読み聞かせてもらったおとぎ話。そんな気分でゆっくり楽しみたい一冊です。(一気読みしちゃったけど)

www.e-hon.ne.jp 夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話(Amazonで購入) 夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話 [ 和爾 桃子 ](楽天ブックスで購入) 「赤ずきんちゃん」「さんびきの子豚」「ジャックと豆の木」などなど、子どもの頃に読み…

コリン・アダムス/小宮太郎訳「ゾンビ対数学~数学なしでは生き残れない」(技術評論社)-発生当初、ゾンビは指数関数的に増加します。しかし、エサとなる人間の数が減少すればゾンビは減少に転じ、ゾンビの減少によって人間の数が増加に転じます。これはすべて数学的に説明できます。

www.e-hon.ne.jp ゾンビ 対 数学 ― 数学なしでは生き残れない(Amazonで購入) ゾンビ対数学 数学なしでは生き残れない [ コリン・アダムス ](楽天ブックスで購入) まず最初にお断りしておかなければいけない。本書をゾンビが出てくるスプラッターなホラー…