タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「秘密」多田尋子/講談社-結婚できる機会があるのに結婚しなかった女性。結婚とは何か。結婚すれば幸せなのか。結婚に対する価値観を問われているような短編集

// リンク 書肆汽水域刊「体温」、講談社刊「体温」に続いて、講談社刊の「秘密」を読んだ。書肆汽水域「体温」に収録されている「秘密」を含む4篇が収録されている。 毀れた絵具箱遠い華燭雑踏秘密 東京の美術学校に通う朋子は、仕方なく出席した美術関係…

「体温」多田尋子/講談社-『男性の存在感』が描かれる4つの短篇を収録する作品集

// リンク 書肆汽水域から刊行された「多田尋子作品集 体温」で、多田尋子という作家の存在を知った。30年以上前に書かれた作品であり落ち着いた大人の恋愛を描く短篇小説は、古さを感じさせるが、それでいてどこかに新しさも感じさせて、「こんな作家がいた…

「体温」多田尋子/書肆汽水域-誰かに依存しているようでいて、しっかりと自分自身で自立している女性たち。30年以上前に書かれた作品なのに、むしろ新しさを感じる短編集。

// リンク 1932年長崎県生まれ。日本女子大学国文科を卒業。1985年に短編小説「凪」を「海燕」に発表し小説家デビューする。1986年に「白い部屋」で第96回芥川賞候補となり、その後「単身者たち」「裔の子」「白蛇の家」「体温」「毀れた絵具箱」で計6度候補…

「隠された悲鳴」ユニティ・ダウ/三辺律子訳/英治出版-『儀礼殺人』という特異な因習を題材にしたサスペンス小説。伝統の影にある人権の問題。

// リンク 少女に恨みがあるわけではなかった。ただほしかったのだ、必要だったのだ。 物語は、この不穏な書き出しからはじまる。そして、3人の男たちによってひとりの少女が犠牲になる。それは、男たちが自らの願いを叶えるための儀礼殺人だ。彼らは、自分…

「鳥肉以上、鳥学未満」川上和人/岩波書店-商店街で手に入る鳥肉の様々な部位を観察し、ときに味わいながら鳥類の進化や生態に迫る!?

// リンク 我が家では、かなりの頻度で鶏肉をつかった料理が並ぶ。唐揚げ、焼き鳥、照り焼き、蒸し鶏、煮物、鍋料理。使う部位も多様で、もも肉、胸肉、手羽元、手羽先、砂肝、レバーなどなど。鳥料理は安価で手軽に作れるので重宝している。 川上和人「鳥肉…

「ゴビ 僕と125キロを走った、奇跡の犬」ディオン・レナード/夏目大訳/ハーパーコリンズ・ジャパン-砂漠を走る過酷なウルトラマラソン。そのレースの最中に出会った一匹の犬のためにディオンは奔走する

// リンク 灼熱の砂漠を数日をかけて250キロも走るなんて人間技ではない。運動嫌いで歩くことすら億劫な私には考えられないことだ。しかし、この本の著者ディオン・レナードは、そういうマラソン大会をいくつも走ってきた。まさに鉄人である。 ディオンは、…

「僕のワンダフル・ジャーニー」W・ブルース・キャメロン/青木多香子訳/新潮文庫-魂の目的を果たしたはずのトビーは、クラリティを愛し守るためにまた生まれ変わる。

// リンク 僕は魂の目的を果たしたのだ。 前作「野良犬トビーの愛すべき転生」のラストで、トビーが何回も転生を繰り返して愛し続けた少年イーサンと、最後の犬バディとして永遠の別れを迎えたとき、彼はそう感じた。これで、自分の使命は終わったのだと思っ…

「野良犬トビーの愛すべき転生」W・ブルース・キャメロン/青木多香子訳/新潮文庫-たったひとりの少年イーサンを愛するために、トビーは何度も生まれ変わる

野良犬トビーの愛すべき転生 (新潮文庫) 作者: W.ブルースキャメロン,W.Bruce Cameron,青木多香子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2012/06/27 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る これまでに4匹の犬を飼ってきた。 最初の犬は、3、4歳の…

「犬ニモマケズ」村井理子/亜紀書房-村井さんちのハリーくんも2歳を過ぎてイケワンになりました!

// リンク イケワンだ!イケワンすぎる!! 翻訳家・村井理子さんの愛犬ハリーくんと村井家の日々を記したエッセイ集の第2弾「犬ニモマケズ」です。前作から1年、2歳9ヶ月になった黒ラブのハリーくん。体重45キロ(前年比10キロ増)と、体もすっかり…

「犬がいるから」村井理子/亜紀書房-村井さんちの黒ラブ・ハリーの圧倒的なかわいさにキュン死しそう

// リンク カワイイ!かわいすぎる!! 村井理子さんの愛犬、黒ラブ(黒毛のラブラドールレトリバー)のハリーくんが、とにかくもうカワイイのだ。「どんだけカワイイの?」と思った方、まずは本書9ページに掲載されている子犬のころのハリーくんの写真をご…

「ジョン」早助よう子/自費出版-『絶対』とは、実は曖昧で危ういものなのだということを考えさせる短編集

habookstore.shop 早助よう子「ジョン」の存在は、「本の雑誌10月号」に掲載された大塚真祐子さんの『新刊めったくたガイド』で知った。 // リンク 「ジョン」には、表題作を含む9篇の短編がおさめられている。さまざまな商業誌に掲載された短編が7篇と書…

「廃墟と犬 ファーベックス-犬と出かける都市探索」アリス・ファン・ケンペン&クレア/金井真弓訳/オークラ出版-朽ち果てて置き去りにされた都市の遺産の中で屹然とカメラをみつめるクレアの凛々しさを見よ!

// リンク 首に女王を想起させるカラーをまとい、誇り高い表情をカメラをみつめる一匹の犬。クレアという名のブルテリアは、壁紙が剥がれ落ちて下地がむき出しになった壁を背に、薄汚れたソファに座っている。まるで貴族のように、その態度は自信に満ちてい…

「レス」アンドリュー・ショーン・グリア/上岡伸雄訳/早川書房-元恋人の結婚式にを欠席するために世界をめぐる旅に出たアーサー・レス。中年作家の出会いと気づき、そして再生の物語

// リンク 「違う! アーサー、違うって、その逆だよ! 僕は成功だったって言ってるんだ。喜びと支援と友情の二十年っていうのは成功だ。何であれ、ほかの人と二十年一緒に過ごしたのは成功なんだよ。バンドが二十年、活動を続けたら奇跡だろ。お笑いの二人…

「今日もパリの猫は考え中 黒猫エドガーの400日」フレデリック・プイエ+シュジー・ジュファ/坂田雪子訳/大和書房-猫を飼っているみなさん、あなたのおうちの猫もエドガーみたいに考えているかもしれませんよ

// リンク エドガーは6ヶ月の子猫。フレデリック・プイエ+シュジー・ジェファ著、坂田雪子訳「今日もパリの猫は考え中 黒猫エドガーの400日」は、エドガーが“アホ家族”と呼ぶ一家との日々を、エドガーの目線で語る物語だ。 物語は、「とらわれて1日目」か…

「エレベーター」ジェイソン・レナルズ/青木千鶴訳/早川書房-兄を殺された少年ウィルが復讐に向かうために乗り込んでエレベーターで経験する出来事。ラストの言葉に心が震える。

// リンク #掟 何があろうと、けっして泣いてはならない。 何があろうと、けっして密告してはならない。 愛する誰かが殺されたなら、殺したやつを見つけだし、かならずそいつを殺さなければならない。 兄のショーンが殺された。ウィルは、掟にしたがって兄…

「ロンドン・ジャングルブック」バッジュ・シャーム作/三輪舎-色鮮やかに描かれる作品たち。そこに表現される作者のイメージ。それらを引き立たせる本づくりの技

// リンク 本の感想を書くのに、こういう話から始めるのは違うと言われてしまうかもしれませんが、この本についてはこの話を抜きにはできないと思うので、そこから始めます。 紙の本ってすばらしい! 何を言っているのか? と思われたかもしれません。これは…

「わたしがいどんだ戦い1940年」キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー著/大作道子訳/評論社-エイダの身体の回復と心の成長を見守るように読みました。

// リンク キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー(大作道子訳)「わたしがいどんだ戦い1940年」は、2018年度の「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書に選ばれた「わたしがいどんだ戦い1939年」の続編であり完結編になる作品です。 s-taka1…

「ペーパータウン」ジョン・グリーン著/金原瑞人訳/岩波書店-自由奔放な少女に振り回されるおとなしい少年。Qとマーゴの関係は、どこにでもありそうだからこそ、放っておかれない気持ちにさせられる。

// リンク まだ本当に小さな子どもの頃に、とても仲の良い女の子がいたことだけを覚えている。 覚えているのは仲の良い女の子がいたことだけ。その子の名前も顔も全然思い出せない。幼稚園に通っていたときによく一緒に遊んだらしいことはなんとなく覚えてい…

「アナーキストの銀行家-フェルナンド・ペソア短編集」フェルナンド・ペソア著/近藤紀子訳/彩流社-はじめてのペソア。最初の一文で魅了されてしまいました。

// リンク それは、第十五回をむかえるベルリン美食協会定例会の席上のことであった。 これは、本書「アナーキストの銀行家-フェルナンド・ペソア短編集」の冒頭に収録されている「独創的な晩餐」の書き出しである。パッと読むと普通のありがちな書き出しな…

「バット・ビューティフル」ジェフ・ダイヤー/村上春樹訳/新潮社-ミュージシャンたちのエピソードの数々は、ジャズに興味をもつ入口になると思う。

// リンク 音楽にはあまり詳しくない。ジャズについても、そういう音楽のジャンルは知っていても、どういうプレイヤーがいたのかなどはよくわからない。だから、『はじめての海外文学vol.4』で金原瑞人さんが、本書「バット・ビューティフル」を推薦していな…

「路上のストライカー」マイケル・ウィリアムズ〔著〕/さくまゆみこ〔訳〕/岩波書店-独裁政権に家族を殺され、命がけで逃げ込んだ南アフリカでは外国人として憎悪の対象となったデオ。彼を救ったのはサッカーだった。

// リンク サッカーは、アフリカで人気のスポーツだという。ボールひとつあればどこでも楽しめるし、ボールがなくても新聞やビニールを集めて丸めたものをボールに見立てればよい。 マイケル・ウィリアムズ「路上のストライカー」も、サッカーを題材にした物…

「わたしはイザベル」エイミー・ウィッティング〔著〕/井上里〔訳〕(岩波書店)-毒親に否定され続けたイザベルを救ったのは読書だった。言葉を得ることでイザベルは成長する。

// リンク 毒親とは、過干渉や暴言・暴力などで、子どもを思い通りに支配したり、自分を優先して子どもを構わなかったりする「毒になる親」のことを言う。 これは、2019年4月にNHKの「クローズアップ現代」で放映された『毒親って!? 親子関係どうすれば・…

「ある奴隷少女に起こった出来事」ハリエット・アン・ジェイコブズ〔著〕/堀越ゆき〔訳〕/新潮社〔文庫〕-奴隷として生まれ、奴隷として生きることを運命づけられた少女は、自らの自由を求めて闘った

// リンク わたしは奴隷として生まれた。 その短い言葉から、ひとりの黒人奴隷少女の闘いの記録は始まっている。 「ある奴隷少女に起こった出来事」は、いまからおよそ150年前の1861年に刊行された作品である。その内容は、あまりに衝撃的で、これがノンフィ…

「新装版プラテーロとわたし」J.R.ヒメナス・著/伊藤武義、伊藤百合子・訳/長新太・絵(理論社)-嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、ささやかな日々のことも、いつもプラテーロがそばにいた。

// リンク プラテーロは、小さくて、ふんわりとした綿毛のロバ。あまりふんわりしているので、そのからだは、まるで綿ばかりでできていて、骨なんかないみたいだ。けれど、その瞳のきらめきは、かたい黒水晶のカブト虫のよう。 J.R.ヒメナス「プラテーロとわ…

「刑罰」フェルディナント・フォン・シーラッハ著/酒寄進一訳(東京創元社)-小説を書くことがシーラッハ氏が自らに課した『刑罰』なのかもしれない。

// リンク 「犯罪」「罪悪」に続くフェルディナント・フォン・シーラッハの短編集シリーズの第3作にして完結編となる作品である。モニター募集に当選して、刊行前のゲラの段階で読む機会をいただいたのだが、本格的なレビューを書くのが刊行後になってしまっ…

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門」北村紗衣・著(書肆侃侃房)-フェミニスト視点で古今東西の小説、映画、舞台を論じる。視点を絞ることで見えてくる作品の新しい世界に興味津々。

// リンク 発売前からTwitterで話題になっていて、「なんだか面白そう」と思っていた北村紗衣「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」を読んだ。思っていた通り、いや思っていた以上に面白かった。 「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」は、Webメディア『wezzy』…

「観光」ラッタウット・ラープチャルーンサップ〔著〕/古屋美登里〔訳〕(早川書房)-タイという国が内部に有する影をみせてくれる短編集

観光 (ハヤカワepi文庫) 作者: ラッタウットラープチャルーンサップ,Rattawut Lapcharoensap,古屋美登里 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/08/30 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 59回 この商品を含むブログ (28件) を見る 『微笑みの国』と呼ば…

「フィフティ・ピープル」チョン・セラン・著/斎藤真理子・訳(亜紀書房)-ひとりにひとつの物語。50人に50の物語。人と人が交わり、重なり、人生の物語が生み出される。

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり) 作者: チョン・セラン,斎藤真理子 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2018/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 人はみな、ひとりひとりにそれぞれの物語がある。ひとつひと…

「ふたりのロッテ」エーリヒ・ケストナー・著/池田香代子・訳(岩波書店)-偶然に再会したふたごの姉妹は、秘密の計画で家族を取り戻せるのか?

ふたりのロッテ (岩波少年文庫) 作者: エーリヒケストナー,ヴァルター・トリアー,Erich K¨astner,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/06/16 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 17回 この商品を含むブログ (31件) を見る 女の子はぎょう…

温又柔、斎藤真理子、中村菜穂、藤井光、藤野可織、松田青子、宮下遼・文/長崎訓子・絵「本にまつわる世界のことば」(創元社)-世界には、本にまつわる言葉が溢れている

本にまつわる世界のことば 作者: 温又柔,斎藤真理子,中村菜穂,藤井光,藤野可織,松田青子,宮下遼,長崎訓子 出版社/メーカー: 創元社 発売日: 2019/05/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私の家には本が溢れている。本棚に入り切らない本が床に…