日本の出版界は、海外作品の翻訳に対する守備範囲が広いと思う。小説についてみれば、メインは英語圏の作品になるだろうが、非英語圏(アジア、南米、北欧その他ヨーロッパ諸国、アフリカ)の作品もかなり積極的に翻訳出版されている。
幅広い国や地域、ジャンルの作品が翻訳出版される日本だが、過去には国内、海外で様々な翻訳出版トラブルを起こしてきた。戦前から戦後の昭和期に起きた日本の翻訳出版事件をリアルタイムに経験してきた宮田昇氏が書き記したのが本書「昭和の翻訳出版事件簿」である。
続きを読むロシアの小説というと、トルストイやドストエフスキーのように重厚で長大な堅苦しいイメージがあって、それが苦手で読まず嫌いな人も多いと思う。だけど、ユーモラスな作品も多いし、読みやすい作品も多いから、実際に読んでみれば結構面白く読めたりする。ブルガーコフとか。
それでも、『SF作品』となるとあまりピンとこない。ロシアのSF作家といわれて名前があげられる作家も浮かばない。ちなみに、「ソラリス」で有名なSF作家スタニスワフ・レムは、ポーランドの作家であって、ロシア人SF作家ではない。
続きを読む温 又柔 集英社 2017-07-26 売り上げランキング : 34702
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言葉をあまり意識して使ったことがない。私にとって言葉は当たり前のようにそこにあって、無意識に使うものであり意識的に使うものではないからだ。
温又柔「真ん中の子どもたち」には、3人の人物が登場する。主人公であり物語の語り部〈私〉である天原琴子。上海に短期語学留学した琴子と同室になった呉華玲。華玲と同じクラスで学ぶ龍舜哉。上海で中国語を学ぶ3人には、それぞれに台湾、中国の血が流れている。
続きを読む琴子には、日本人の父と台湾人の母がある。
華玲には、台湾人の父と日本人の母がある。
舜哉の両親はふたりとも中国人だが帰化して日本国籍を有している。
温又柔さんが登壇する書店イベントに参加したことがあります。5月末に青山ブックセンター本店で開催された「たべるのがおそいvol.3刊行記念トークイベント」でした。
登壇者は温さんの他、作家・翻訳家で「たべおそ」の編集責任者である西崎憲さん、作家の星野智幸さんのお二人でした。
そのイベントで見た温又柔さんの姿は、私に“温又柔”という作家の存在を強く印象づけました。イベントから帰宅後の私はこんなツイートをしています。
今日は、青山ブックセンター本店で行われた「たべおそ」のイベントに行ってきました。色々楽しい話を聞けてあっという間の90分。温又柔さん、とっても可愛らしい方という印象。そして文学談義が止まらなくて、この方は本当に文学が好きなんだな~と感じました。 pic.twitter.com/JhIAAAFZlW
— タカラ~ム (@ramuramu) 2017年5月28日
よく話し、よく笑い、相手の話には「うんうん」と頷きながら聴き入る。本当に文学について話すことが好きな人、それが私から見た温又柔さんという作家の印象でした。
どうして温さんは、そんなに文学が好きなのだろう?
その答えが、本書「台湾生まれ日本語育ち」を読んでわかったような気がします。