子どもの頃の経験は、その子を大きく成長させるだけでなく、大人になってからの素敵な思い出や生きる糧となる。
ヴィンス・ヴォーター「ペーパーボーイ」は、少年のひと夏の経験を描く物語だ。
1959年の夏、メンフィス。ヴィクター少年は友人ラットの代わりに1ヶ月間新聞配達の仕事をすることになる。ヴィクター少年は、吃音症のためうまく喋ることができない。言葉を発するときには、いつも「ssss(スススス)」と歯の間からゆっくり息をもらしながらそっと言うようにしている。
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子どもの頃の経験は、その子を大きく成長させるだけでなく、大人になってからの素敵な思い出や生きる糧となる。
ヴィンス・ヴォーター「ペーパーボーイ」は、少年のひと夏の経験を描く物語だ。
1959年の夏、メンフィス。ヴィクター少年は友人ラットの代わりに1ヶ月間新聞配達の仕事をすることになる。ヴィクター少年は、吃音症のためうまく喋ることができない。言葉を発するときには、いつも「ssss(スススス)」と歯の間からゆっくり息をもらしながらそっと言うようにしている。
続きを読む本を読むひと (Shinchosha CREST BOOKS)
21世紀のこの時代に、現実にジプシーなんて存在するのだろうか。まずはそこが気になって、ネットで『ジプシー』を検索してみた。
アリス・フェレル「本を読むひと」は、フランスのパリ郊外と思われる場所でキャンピング・カーを根城にして暮らすジプシーの一家と、一家に本を読み聞かせることで彼らの生活に変化を与えようとする図書館員の女性エステールとの交流を描いた物語だ。アンジェリーヌを女家長とするジプシーの一家には、5人の息子と4人の嫁(長男は独身)、彼らの子どもたちがいる。彼らは流浪の民であるが故にあらゆる面で不利益を被っているけれど、特にそれが不満というわけでもなく、自分たちが置かれた環境と今の生活に満足しているように見える。
図書館員のエステールは、そんな彼らに本を読んで聞かせるところからはじめていく。最初は子どもたちに本を読み聞かせ、次第に大人たちもエステールの来訪を受け入れるようになっていく。
本書の邦題は「本を読むひと」であるが、原題を直訳すると「恩寵と貧困」となるという。《恩寵》とは、エステールがジプシーたちに与える本を読み聞かせることであり、子どもたちを学校に行かせようと奔走する行為であるし、《貧困》とはアンジェリーヌたちが置かれている立場である。物質的な貧しさであり、社会からさまざまに阻害された権利の貧しさである。
ここで、私にはある疑問がわいてきた。アンジェリーヌたちは、本当に貧しいのだろうか、と。
確かに彼らは貧しい。住む場所もなく、仕事もなく、子どもたちを学校にも通わせられない。だが、それを貧しいとするのは、私たちの価値観で彼らを見ているからだ。安住の地を有し、毎日仕事をし、子どもたちには十分な教育の機会を与えてあげられる。私たちが当たり前にできることができていないから、ジプシーを貧しいと決めつけてしまうのではないか。そう考えると、エステールの行為がアンジェリーヌたちにとって、本当に価値のある行為だったのだろうか。
貧乏人と思われて平気なジプシーなど、めったにいるものではない。
という書き出しでこの物語ははじまる。この一文にこそ、アンジェリーヌたちとエステールの価値観の相違が込められているのではないか。
冒頭に「21世紀の現代にジプシーは存在するのか、ネット検索した」と書いた。結果から言えば、今の時代でもジプシーと呼ばれる人たちは存在する。しかし、彼らの存在は好意的に見られてはいない。ジプシーは、ホームレスと同等の存在であり、観光客などにたかって物乞いをして生きているような人たちだというネガティブな話が多い。ただ、ジプシーたちの生き方というのは過去から現代に至るまで、おそらくほとんど変わっていない。自らの定住の地を持たず、仕事も持たず、自由に生きる。ただ、それを受け入れる社会が大きく変わったのだと思う。私たちの価値観の変化が、ジプシーたちを哀れんだり、嫌悪したりするようになったのだ。
ひとつ思い出したことがある。それは、私が母から聞いた話だ。母の実家は商売を営んでいて、日頃から人の出入りの多い家だった。母がまだ幼い子どもだった頃、彼女の実家にはよく薄汚れた乞食のような人が出入りしていたという。今の時代なら、商店にホームレスが頻繁に出入りしていたら問題になるだろう。だけど、母の実家の商店では、特に拒むこともなく、乞食が庭先で寝ていたりしても誰も文句を言わず、乞食を追い出そうともしなかったそうだ。むしろ、家族の食事のついでに乞食に握り飯を食べさせたりもしていたらしい。さすがに、商売の邪魔になるときには追い出したりもしたそうだが、乞食もそこは心得ていて、商売に迷惑をかけるようなことはなかったという。
「今ならそんなこと絶対にしないけどね。あのときはそれが普通だった」
と、母はちょっと苦笑いしながら、懐かしそうにこの話をしていた。そのことを、このレビューを書きながら思い出した。
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掲示板企画に連動して(と言いつつ完全に遅れているのだが)、「シャーロック・ホームズ・シリーズ」作品を個人的に読み返している。今回は、その第4弾にして、ホームズシリーズの長編4作品のラストとなる「恐怖の谷」を読んでみた。
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