タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】スティーヴン・キング/白石朗訳「ミスター・メルセデス」(文藝春秋)-メルセデスを暴走させて8人の命を奪った殺人鬼“ミスター・メルセデス”と退職した元刑事との息詰まる攻防

2017年最初の更新になります。今年もよろしくお願いします。
新年最初にとりあげるのは、年末年始に読んだスティーヴン・キングの「ミスター・メルセデス」です。

スティーヴン・キングといえば、「キャリー」、「シャイニング」、「IT」、「アンダー・ザ・ドーム」など数々のベストセラーを生み出してきたモダンホラー小説の巨匠である。その“モダンホラーの巨匠”による初めてのミステリー作品が、本書「ミスター・メルセデス」であり、初ミステリーにしてアメリカ探偵作家クラブが選出するエドガー賞の長編部門賞を受賞している。

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【2016年まとめ】今年読んだ本と今年見た映画からお気に入りをリストアップしてみた!

2016年最後のブログ更新です。最後は、2016年に読んだ本、劇場で鑑賞した映画の中からマイ・ベスト3を選んでみたいと思います。

2016年に読んだ本、観た映画の数は以下の通りです。

  • 2016年に読んだ本 108作品
    ※上下巻などの複数冊の本はまとめて1作品でカウント
  • 2016年に劇場で観た映画 19本

それではまず、読んだ本の中からマイ・ベスト3を発表します。国内編と海外編に分けました。

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【書評】ゲオルギイ・コヴェンチューク/片山ふえ訳「8号室~コムナルカ住民図鑑」(群像社)-“ガガ”の愛称で親しまれた画家であり名エッセイストでもある著者の思い出が描かれた短篇小説風のエッセイ集

8号室―コムナルカ住民図鑑

8号室―コムナルカ住民図鑑

 

本書の著者ゲオルギイ・コヴェンチュークは、1933年生まれでレニングラード出身の画家でありエッセイストとして知られた人物である。本書は、彼が実際に生活した『コムナルカ』という共同住宅での思い出を描いた短篇小説風のエッセイを中心に13篇が収録されている。

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【書評】チャールズ・ウィルフォード/浜野アキオ訳「拾った女」(扶桑社)−行きずりの女を男は愛しいと感じた。ふたりは愛を交わし、そして落ちた。行き着く先には悲劇があった。

拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)

 

チャールズ・ウィルフォード「拾った女」は、文字通りあるひとりの女を拾った男の物語だ。

サンフランシスコのカフェで働くハリー・ジョーダンは、その夜もいつものように店に出ていた。間もなく深夜11時になろうかという時間。慌ただしく食事を終えた客が店を出るのと入れ違いに入ってきた女は、明らかに酔っていた。ハリーは、彼女ヘレン・メレディスを“拾った”。

身元もよくわからない飲んだくれのアル中女を拾ったハリーは、そこから彼女に翻弄される。アル中で精神的も不安定なヘレンは、ハリーのアパートに転がり込むことになるのだが、その不安定さゆえにハリーを振り回すことになる。ヘレンが所持していた金が尽きてハリーが仕事に出るようになると、ハリーが不在の間に酒に酔った状態で街に出て騒動を起こす。それでも、ハリーはヘレンを愛し続ける。そして、ふたりはゆっくりと悲劇の底へと落ちていく。

以下ネタバレ

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【書評】ちきりん「自分の時間を取り戻そう」(ダイヤモンド社)−この本には生産性を向上させるための具体的な方法は書かれていない。この本から読者が知るべきは生産性の概念と重要性である

もうすぐ2016年が終わる。「今年も忙しい1年だった」と年の暮れに1年を振り返って感じている人も多いだろう。

年末、そして年度末。どういうわけか毎年この時期は忙しい。毎日遅くまで残業し、休日出勤を繰り返しても終わりが見えない。逃げ場もなく、考えることさえも疲れ果て、ただただ毎日働くだけの日々。その行く末が、自ら命を絶つという選択肢になってしまうこともある。

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【書評】閻連科/谷川毅訳「年月日」(白水社)-干ばつの村にたった1本残ったトウモロコシを守るひとりの老人と1匹の盲犬の戦いのはてにあるもの

年月日

年月日

 

ついに『年月日』が日本でも出版されました。この作品は中国でもほかの国でも広く愛され、論争になることも非難されることもほとんどありませんでした。日本でどのように受け入れられるかはわかりませんが、日本の読者の皆さんが読み終えた後、軽くため息をついて、「へえ、これは彼のほかの小説とぜんぜん違う、まったく別の閻連科だ」と言ってくださるなら、それは私が病気と闘いながら書いたこの作品への最高のご褒美です。

2014年に翻訳刊行されて高い評価を得た傑作「愉楽」で閻連科という作家の存在を知り、作品の世界観に魅了されてファンになった読者にとって、この「年月日」はかなり異質な作品に感じる。

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【書評】「まだまだ知らない夢の本屋ガイド」(朝日出版社)−私たちの知らない本屋さんがそこにある。それは夢のような本屋さんかもしれない。

まだまだ知らない 夢の本屋ガイド

まだまだ知らない 夢の本屋ガイド

 

出版不況と言われ続け、街から書店が姿を消していく中、個性的な店構え、独自の棚作り、さまざまなイベント企画など、その店ならではのコンセプトを売りにした書店がある。ヴィレッジヴァンガードB&Bといった書店が代表格だろうか。

いまや、書店には本が並んでいればいい、という考え方では商売は立ち行かなくなっている。だから、全国の書店は、個性的な店作りを進めて、お客様の興味を惹く努力を怠らない。われわれ書店を利用するユーザーとしては、「大変だな」と思うと同時に個性的な書店が増えることに興味津々だったりする。

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