タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】佐野洋子「私の息子はサルだった」(新潮社)-嗚呼、今も昔も男の子とはバカでありサルであることよ(笑)

私の息子はサルだった

私の息子はサルだった

 

 

我が身を振り返ってみれば、子どもの頃は本当にアホであったと思うのだ。

思えばあの頃は、テレビゲームなんてものはあるはずもなく、「スマホ? なにそれ、美味しいの?」の世界。子どもは風の子と真冬でも半袖半ズボンで野山を駆け回り(当然のように風邪をひくのだが)、秘密と思っているのは本人たちばかりの秘密基地をエンヤコラと作り上げる。今から思えばいったい何が面白かったのだろうか?

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【書評】こうの史代「この世界の片隅に(全3巻)」(双葉社)-昔、戦争がありました。たくさんの人が亡くなりました。今、私たちは「この世界の片隅に」生きています

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

 

 

すず「この街は、みんなが誰かを亡くして、みんなが誰かを探しとる。みんなが人待ち顔ですね」
周作「うん」
周作「すずさん。わしとすずさんが初めて会うたんはここじゃ。この街もわしらも、もうあの頃には戻らん。変わり続けて行くんじゃろうが。わしは、すずさんはいつでもわかる」
周作(すずの頬に手を伸ばし)「ここへほくろがあるけえ、すぐにわかるで」
すず(周作に撫でられた頬を触りながら)「周作さん、ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう、周作さん」
すず(周作の手を取り)「ほいで、もう離れんで…ずっとそばに居ってください」

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【書評】チェーホフ著/沼野充義訳「[新訳]チェーホフ短篇集」(集英社)- #はじめての海外文学 フェアVol.2「ビギナー篇」の1冊。ドストエフスキーやトルストイの重厚長大さとは異なるユーモア短編の妙がチェーホフの魅力

新訳 チェーホフ短篇集

新訳 チェーホフ短篇集

 

2009年に村上春樹1Q84」が刊行されたとき、作中に登場する「サハリン島」が注目され、「1Q84」のベストセラー化に歩調を合わせるようにベストセラーを記録したことがある。

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【書評】ノダル・ドゥンパゼ「僕とおばあさんとイリコとイラリオン」(未知谷)-大好きなおばあさんとイリコとイラリオンと過ごした日々

僕とおばあさんとイリコとイラリオン

僕とおばあさんとイリコとイラリオン

 

(ドアをノックする音。ひとりがけのソファから老人がゆっくりと立ち上がる。彼の足元では、これも相当な老齢とみえる犬が眠っている。老人は少しおぼつかない足取りでドアに近づき扉を開ける)

よく来たね。まあお入りなさい。おや、服が濡れているね。表は雨かね。齢を取って表に出るのが億劫になっているから、外の様子に気づかなかったよ。さ、ストーブの近くに座るといい。

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【書評】窪美澄「晴天の迷いクジラ」(新潮社)-港に迷い込んだクジラが私たちに教えてくれること

晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

 

生きていくことに疑問を感じたことはないだろうか?

窪美澄晴天の迷いクジラ」は、デビュー作「ふがいない僕は空を見た」に続く第2作にあたる。

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【書評】かたやま和華「猫の手、貸します〜猫の手屋繁盛記」(集英社)ー「猫の手屋繁盛記」シリーズ第1巻。何の因果か猫の姿になってしまった猫太郎こと宗太郎。善行を積むことで彼は人間に戻れるのか?

10月3日から11月4日まで、1ヶ月にわたってBOOKPORT大崎ブライトタワー店で開催された「#棚マル もっと本が好き!フェア」は、大盛況のうちに惜しまれつつ終了しました。私もささやかながら、棚に配置する本の推薦をさせていただきまして、自分が選んだ本がリアル書店の棚に置いてもらえるという貴重な経験をさせていただきました。関係者の皆さんに御礼申し上げます。また機会があれば、こういう企画に参加したいです。

さて、本のレビューです。

かたやま和華「猫の手、貸します〜猫の手屋繁盛記」は、#棚マルフェアで購入した中の1冊。推薦者はレビュアーのはるほんさんです。実は、ひとつ前にレビューした「ロボット・イン・ザ・ガーデン」もちょっとしたご縁ではるほんさんからお譲りいただいた作品でして、私の中では「ロボット・イン・ザ・ガーデン」~「猫の手、貸します」と続き一連の読書は、期せずして「はるほん祭り」状態でした。あ、別に同じタイミングで開催されていた「神保町古本まつり」にかけたわけではありませんよ。あくまで偶然です(笑)

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【書評】デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(小学館)ー育児(ただしロボット)はダメ男を成長させる

ロボット・イン・ザ・ガーデン

ロボット・イン・ザ・ガーデン

 
ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

 

 

完全に虜(とりこ)なのである。何にかっていうと、本書に登場する旧式ロボット“タング”にである。

「庭にロボットがいる」妻が言った。

デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、ある日突然主人公ベンの家の庭先に薄汚れた旧式のロボットが現れる場面からはじまる。

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