タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】ラ・フォンテーヌ「ラ・フォンテーヌ寓話集」(洋洋社)-シンプルかつユーモアのある物語が教えてくれる人間の弱さと面白さ

「すべての道はローマに通ず」

ラ・フォンテーヌ寓話

ラ・フォンテーヌ寓話

  • 作者: ラ・フォンテーヌ,ブーテ・ド・モンヴェル,大澤千加
  • 出版社/メーカー: ロクリン社
  • 発売日: 2016/04/11
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

この有名な言葉を残したのが、17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌである。そのラ・フォンテーヌが書き残した数々の寓話から26編を収めたのが本書「ラ・フォンテーヌ寓話集」だ。

続きを読む

【書評】アレックス・ジョンソン「世界の不思議な図書館」(創元社)-本があって、人が集まれる場所になっている。それだけで図書館なのだ。

図書館をよく利用する。読みたい本はたくさんあるけれど、すべてを購入するわけでにはいかない(経済的にも、物理的にも)、そんなときは図書館がありがたい。

世界の不思議な図書館

世界の不思議な図書館

 

本書は、世界にある一風変わった図書館を集めた写真集である。

続きを読む

【書評】リービ英雄他「コレクション戦争と文学~崩~9・11変容する戦争」(集英社)-9.11テロ以後の変容した戦争を描くアンソロジー

2001年9月11日、イスラム過激派の青年たちにハイジャックされた4機の航空機のうち3機がそれぞれ、ニューヨークのワールドトレードセンター北棟と南棟、ペンタゴンに激突した(1機は墜落)アメリカ同時多発テロ以降、戦争の形態は大きく様変わりした。

本書は、2010年に集英社から刊行された文学全集「戦争と文学」シリーズの第3回配本として上梓された。

続きを読む

【書評】エトガル・ケレット「あの素晴らしき七年」(新潮社)-イスラエルに暮らす作家がユーモラスに描き出す日常と戦争の影

中東地域は、争いの絶えない地域であるが、イスラエルは間違いなくその中心にあって、争いの火種となっている場所だと思う。1948年に独立が宣言されて以降、第一次中東戦争が勃発し、第二次、第三次、第四次と周辺国との戦争を繰り広げてきた。1993年には、イスラエルのラビン首相とPLOアラファト議長との間で「オスロ合意」と呼ばれる和平交渉が合意されたこともあったが、ラビン首相に対するイスラエル国内の批判が高まり、その結果ラビン首相が暗殺されるなど、平和な状況は長く続くことなく現在も戦闘状態が継続している。

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

本書「あの素晴らしき七年」の著者であるエトガル・ケレットは、イスラエルに住むユダヤ人作家だ。

続きを読む

【書評】フェルディナント・フォン・シーラッハ「テロ」(東京創元社)-7万人の命を救うために164人を乗せた旅客機を撃墜した空軍少佐は英雄なのか罪人なのか

多数を救うために少数を犠牲にする行為は正義なのか?

テロ

テロ

 
テロ

テロ

 

ハーバード大学マイケル・サンデル教授「これからの「正義」の話をしよう」など、多くの書籍や哲学講義、法学講義などの場で議論され続けている問題を題材に、「犯罪」や「罪悪」などのベストセラー作家であるフェルディナント・フォン・シーラッハが書き上げたのが、本書「テロ」である。

続きを読む

【書評】米澤穂信「真実の十メートル手前」(東京創元社)-ミステリーが苦手になってしまったのか、この作品にシンクロできなかった自分がいる

 

真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

 
真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

 

 

昔、小説というものを読み始めて、まだ日が浅い頃には読書の中心はミステリーがメインだった。というのも、ご多分に漏れず子どもの頃の読書体験は、学校の図書室に並んでいた「シャーロック・ホームズシリーズ」であり、「アルセーヌ・ルパンシリーズ」であり、「少年探偵団シリーズ」であったからだ。少年少女向けのミステリーシリーズを発端として、やがて中学生くらいになってくると、江戸川乱歩横溝正史高木彬光へと流れ、そこから赤川次郎や西村京太郎へと移行していく。

それが、いつの間にかミステリーを読まなくなっていった。まったく読まないわけではない。国内作家であれば、島田荘司綾辻行人森博嗣などノベルス中心の新本格も多少読んだし、面白かった作品もある。

続きを読む

【書評】林典子「キルギスの誘拐結婚」(日経ナショナルジオグラフィック社)-花嫁を強引に誘拐し結婚してしまうというキルギスの驚くべき慣習

結婚というのは、男女が互いに出会い、好きになり、愛を育み、結ばれることであるはずだ。しかし、世界にはそういう常識では考えられないような風習、慣習というものがあって、私たちから見るとあまりに非常識と思えるようなことが平然と行われていたりする。

キルギスの誘拐結婚

キルギスの誘拐結婚

 
続きを読む